{ "389000711_0": "チカラを纏う者たち", "389000711_1": "「――――」", "389000711_2": "「こんなところにも、聖遺物の被害者が……」", "389000711_3": "「それに、ここに来るまでに転がっていた美術品も\\n なんだかヘンテコな感じがしたデスよ」", "389000711_4": "「アレも聖遺物の影響なんデスか……?」", "389000711_5": "「ここに至っても、我々では『メフィストフェレスの薬』の力を\\n 断定することができないのが痛いが……」", "389000711_6": "「あれらが、美術品たちの本来の姿だった……\\n 『完全』なる姿だったとも言えるかもしれないな」", "389000711_7": "「そう、なのかもしれません……資料で見ていたものよりも、\\n きれいになってたり、直っていたものもあったり……」", "389000711_8": "「え、そうデスか? どれもブッ飛んでたように思うデスが。", "389000711_9": " むぅ……芸術は難しいデス」", "389000711_10": "「い、いいなって思うモノは、\\n きっと人それぞれだからッ」", "389000711_11": "「――船の乗組員たちは、無事だろうか。\\n どこかに隠れてくれていればいいのだが……」", "389000711_12": "「デスデス。こんな地獄みたいな景色、\\n もうたくさんデスよッ!」", "389000711_13": "「これが聖遺物の力、なんだよね。\\n わたしたちも、その一端をギアとして身に纏っているけど……」", "389000711_14": "「こういう惨状を目の当たりにすると思うことがあるの。\\n 聖遺物は、本来ヒトの手に余る脅威でしかないのかもって」", "389000711_15": "「わたしたちも過去にその力に縋ったことがあった。\\n 人類を救うなんて、独善的な考えのもとに……」", "389000711_16": "「……だからこそ、気付いてしまったんです」", "389000711_17": "「ゲオルクも、もしかしたら、って。\\n 何かに絶望して、そのせいで、何かが見えなくなって……」", "389000711_18": "「……」", "389000711_19": "「調……。", "389000711_20": " 気持ちは、わかるつもりデスよ」", "389000711_21": "「なんせ隣にいたデスからねッ! あの頃はアタシも、\\n 世界の脅威になることも必要なんだって思っていたデス」", "389000711_22": "「こんなふうに、強く感じるのは……今回の聖遺物が、\\n 『メフィストフェレスの薬』なんて名前だからなのかな」", "389000711_23": "「――力は力であると、わたしは思う」", "389000711_24": "「先刻、ニケの強大な力が、\\n あまりに強く、わたしたちを護ったとき……」", "389000711_25": "「その雄々しさ故に、我々は、あの力がどちらのものなのか、\\n あの場では判断すらつかなかった」", "389000711_26": "「あれこそが、純然たる力であるとわたしは思う。", "389000711_27": " ……だからこそ、『力』の使い方を間違ってはいけないのだ」", "389000711_28": "「事実、この力でも護れぬもの、\\n 手の届かなかった命など数えきれぬほどにある」", "389000711_29": "「だが、それでも我々は……託された想いを、\\n 護りたいという願いを、この力で繋いできた」", "389000711_30": "「わたしは……\\n なればこそ、それだけは信じたいのだ」", "389000711_31": "「翼さん……」", "389000711_32": "「そう、デスね。翼さんの言う通りデス。\\n アタシたちは確かに一度は間違えたデス」", "389000711_33": "「けど、間違ったからこそ、わかることもある。\\n だからもう、間違わない……ッ!」", "389000711_34": "「ことわざにもあるデス。\\n 『失敗は成功のマム』デースッ!」", "389000711_35": "「フフフッ……\\n そうだね。成功のマム、うんッ!」", "389000711_36": "「だが、世界にはまだ聖遺物を、\\n 歪んだ考えのもとに行使しようとする輩がいる」", "389000711_37": "「我々はそれを断じて阻止しなければならぬ。\\n 防人として……聖遺物を纏う体現者としてッ!」" }