{ "388000511_0": "座学で学ぶ、五行相剋", "388000511_1": "「ふあああぁ……。", "388000511_2": " よく寝たなぁ」", "388000511_3": "「フフ、大きなあくびですね」", "388000511_4": "「けど、精神世界の中なのに眠るって、\\n どういうことなのかしら?」", "388000511_5": "「そういえばそうだな。\\n しかも、現実だと1時間も経ってないんだろ?」", "388000511_6": "「それでこんなにすっきりするんだったら、\\n 得した気分だな」", "388000511_7": "「そういう問題かしら……?」", "388000511_8": "「皆さん、お揃いのようですね」", "388000511_9": "「おはようございます」", "388000511_10": "「おはようございます。\\n よく眠れましたか?」", "388000511_11": "「ああ。\\n ぐっすりだ」", "388000511_12": "「それはよかったです。\\n 疲れを引きずっては、修行に支障をきたしますから」", "388000511_13": "「この世界では、精神の疲れがそのまま肉体の疲れとして\\n 感じるみたいね」", "388000511_14": "「そう考えると、緒川さんがわたしたち3人相手に\\n 涼しい顔をしていたのって……」", "388000511_15": "「とんでもない精神力ということになるわね……」", "388000511_16": "「それで、今日はどんな修行をするんだ?\\n こっちの準備はばっちりだッ!」", "388000511_17": "「そうですね。まずは忍術というものをよく知ってもらうため、\\n 座学といきましょうか」", "388000511_18": "「……へ?」", "388000511_19": "「ダイヴマシンに入る前にお話しした、\\n 五行思想については覚えていますか?」", "388000511_20": "「ああ、えーっと……\\n 水金地火木土天海、だったか?」", "388000511_21": "「それは太陽系の惑星の順番ですね……」", "388000511_22": "「でも、大体あってるわよね」", "388000511_23": "「惑星への名づけも、五行思想によるものですからね。\\n これに太陽と月を足したものが、7つの曜日となります」", "388000511_24": "「へぇ、そうだったのか」", "388000511_25": "「意外と身近なところにあるものですね」", "388000511_26": "「ええ。しかし、アカオニの術は五行思想ではなく、\\n 錬金術の四大元素を使ったものになっています」", "388000511_27": "「四大、つまりは地水火風ね。\\n 被っているものもあるけど、1つ足りないわね」", "388000511_28": "「はい。ここで重要となるのが、アカオニが自分の術を\\n 忍術と規定していることです」", "388000511_29": "「これはアカオニのこだわりによるものと思われますが、\\n だからこそ、突ける弱点もあります」", "388000511_30": "「それが、五行相剋です」", "388000511_31": "「アカオニの術をかき消していたやつだな」", "388000511_32": "「ええ。僕の術は装者の皆さんと比べれば、\\n 生み出せる力はそこまで大きくはありません」", "388000511_33": "「しかし、適切な相性の術をぶつければ、\\n 小さな術でもかき消せます」", "388000511_34": "「ただ、アカオニの錬金術師としての練度は、\\n 僕の術の威力を上回っています」", "388000511_35": "「確かに、とんでもなく派手だったもんな」", "388000511_36": "「相応の威力はある、ということね……」", "388000511_37": "「ええ。アカオニの相手は主に僕がするつもりですが、\\n 戦場ではどんな状況になるかわかりません」", "388000511_38": "「そこで、皆さんにもアカオニの術への対処を\\n 学んでもらおうと思います」", "388000511_39": "「なるほど、それで座学か」", "388000511_40": "「はい。そして要点は、アカオニの術が結局のところ\\n 忍術の紛い物であることです」", "388000511_41": "「アカオニは錬金術の風の要素を\\n 木遁に見立てているようでした」", "388000511_42": "「その練度は他の術より低かったのですが、\\n より重要なのは、要素が1つ足りないことです」", "388000511_43": "「五行思想における金、ね」", "388000511_44": "「そうです。錬金術には、金遁がありません。\\n つまり、アカオニが予期せぬ術で虚を突けるというわけです」", "388000511_45": "「なるほどな。\\n それがアカオニ攻略の鍵ってわけか」", "388000511_46": "「でも、金遁っていうのはどんなものなんですか?\\n アニメとかマンガでも、あまり見たことがないような……」", "388000511_47": "「あれじゃないか、小銭を指で弾いてぶつけるやつ。\\n 時代劇で見たことあるぞ」", "388000511_48": "「着眼点がいいですね、あながち間違いではありません。\\n 金遁というのは他の術よりも曖昧で、解釈が広いんです」", "388000511_49": "「例えば、さっき言ったように小銭を使ったり、\\n 鐘を鳴らして人心を惑わしたり、多種多様です」", "388000511_50": "「どれも相手を倒すには向いていない気がするけど……?」", "388000511_51": "「真っ向から倒すだけが忍の技ではありませんからね。\\n とはいえ、金遁の会得は他とはまた違った難しさがあります」", "388000511_52": "「忍術を理解してもらうために説明はしましたが、\\n 金遁については僕が請け負うので、ひとまず忘れてください」", "388000511_53": "「それじゃあ、あたしたちは何をすればいいんだ?」", "388000511_54": "「忍術の会得にまでは至らないかもしれませんが……。\\n まずは木・火・土・水を肌で感じていただきます」", "388000511_55": "「知り、理解することは術を解釈し、\\n 応用する際の大きな強みになりますので」", "388000511_56": "「わかりました。\\n さっそくお願いします」", "388000511_57": "「ああ。そうと決まったら、さっそく……、", "388000511_58": " ……ッ!?」", "388000511_59": "「なんだ、身体が動かない……ッ!?」", "388000511_60": "「まさかこれは……影縫いッ!?」", "388000511_61": "「いつの間に……?」", "388000511_62": "「――と、このように、忍者の術は相手の意表を突くことで、\\n 最大の効果を発揮することができます」", "388000511_63": "「修行中も、油断はしないようにしてくださいね」", "388000511_64": "「いつ仕掛けられたのか、まったくわからなかった……。\\n 本当にとんでもないわね、本物の忍者は」" }