{ "336000111_0": "境界を越えて", "336000111_1": "『――もはや、審判は下された。\\n 地獄となって迫る空と海に、為す術も無く立ち尽くす戦士たち』", "336000111_2": "「ダメだ……諦めちゃ――\\n だけど……一体どうすれば――」", "336000111_3": "『雷鳴を伴って叩きつけられる波濤は――\\n 航空機を、船舶を無慈悲に飲み込み、命を噛み砕いていく』", "336000111_4": "「そんな……本当にこれで終わり……?\\n もう、どうしようもないの……?」", "336000111_5": "『今日を生きる命を見捨てることだけが、\\n 明日を救うために必要だと説かれても――』", "336000111_6": "「……そんなの、残酷だよ……」", "336000111_7": "「……信じてたのに……ッ! きっと、負けないって。\\n みんなの明日を、救ってくれるってッ!」", "336000111_8": "「でも……もう……」", "336000111_9": "「あたしは……あたしは……」", "336000111_10": "『また1つ、夢が死ぬ――星が散る』", "336000111_11": "『世界は、闇よりも昏き青に塗り潰されていき――\\n 一面に広がった、抗い難いまでの赤に帰結する……』", "336000111_12": "『―完―』", "336000111_13": "「――こんな結末、あたしは望んでいなかったッ!」", "336000111_14": "「はいはい。エンディングアニメも流れたし、\\n 電気点けるからね」", "336000111_15": "「っていうか、呆気にとられているうちに\\n エンディングの歌、2回流れなかった? わたしの気のせい?」", "336000111_16": "「ずいぶん古そうなアニメでしたけれど、\\n おふたりとも、ずいぶん入り込んでいましたね」", "336000111_17": "「もちろんよッ!\\n みんなだって観てたでしょ?」", "336000111_18": "「序盤から丁寧に配置された伏線と、クライマックスに向けての\\n 怒涛のごとき回収、それに付随する話の盛り上がり――」", "336000111_19": "「そうだっけ?」", "336000111_20": "「あとは、ラストさえ……、\\n ラストに全ての大逆転があったならッ!」", "336000111_21": "「……いや、まあ、このラストだからこそ、\\n 名作を超えた伝説になったんだけど、ゴニョゴニョ……」", "336000111_22": "「まさか負けちゃうだなんて、思わなかったよね……」", "336000111_23": "「当時のアニメ事情じゃよくある打ち切りだったとはいえ、\\n ――こんな結末、あたしは望んでいなかったッ!」", "336000111_24": "「それ、さっきも言ってた」", "336000111_25": "「じゃ、どんな結末を望んでたのさ?」", "336000111_26": "「大熱血のハッピーエンドに決まってるでしょッ!」", "336000111_27": "「ハッピーエンドね。\\n つまりは、ヒーローが勝てば良かったってこと?」", "336000111_28": "「あったりまえじゃないッ!\\n あんたもそう思うでしょ?」", "336000111_29": "「うーん……」", "336000111_30": "「どうしたの?」", "336000111_31": "「頑張るのがあのヒーローだけじゃなくて、\\n もっとみんなの協力があればーと思って……」", "336000111_32": "「ナントカ連盟とか、簡単に諦めずに連携してたら、\\n もっと違う結末になったかもしれないのに……」", "336000111_33": "「それはそうかもしれないけれど、\\n そんな逆境すら覆してこそ、ヒーローのナンタルカじゃない?」", "336000111_34": "「はうッ!? そのココロはッ!?」", "336000111_35": "「ヒーローは孤独だからこそヒーローなのよ」", "336000111_36": "「でも、先ほどのアニメでもヒーローには\\n 仲間がいたようですが……」", "336000111_37": "「仲間はいいの。\\n でも、護るべき人々とは分けてなきゃ」", "336000111_38": "「護るべき人々の運命をも背負って戦い、戦い抜いてッ!\\n 最後はバッチリかっこよく勝利するッ!」", "336000111_39": "「それでこそ、理想のヒーローってものじゃない(ふんす)」", "336000111_40": "「孤独でも、かっこよく勝利か……。\\n だったらわたしは、ヒーローにはなれそうにないなぁ……」", "336000111_41": "「今でも十分、響は誰かのヒーローだけどね」", "336000111_42": "「実際、わたしたち、\\n ビッキーにはもう何度も助けられているし」", "336000111_43": "「ヒーローって意外に、\\n ヒーローの自覚が無いのかもしれません」", "336000111_44": "「……でも、今後に更なるヒーローを目指すって言うのなら、\\n あたしは協力を惜しまないんだけどねッ!」", "336000111_45": "「え? 目指すって言ったわけでは……」", "336000111_46": "「まあまあ。だったらさっそく\\n 徹夜でヒーローアニメのマラソンしかないわね」", "336000111_47": "「うえええええッ!?\\n 準備も無しにいきなり高地トレーニングッ!?」", "336000111_48": "「あんたにヒーローのナンタルカをブチ込んであげるッ!」" }