{ "329000441_0": "「この世界にもキャロルちゃんがいたなんて……」", "329000441_1": "「以前の錬金術絡みの事件にも関わってこなかったから、\\n てっきり存在していないものかと思っていました」", "329000441_2": "「あたしも、先日の仮想脳領域での戦いが無かったら、\\n そいつだと気づかなかったけどな」", "329000441_3": "「まずはあなたたちの世界で交戦したキャロルと、\\n オートスコアラーたちについて聞かせてもらえるかしら?」", "329000441_4": "「はい、わかりました」", "329000441_5": "「なるほど……大体は、こちらで収集したデータの通りね」", "329000441_6": "「大人の姿になったキャロルは、\\n まだこっちじゃ確認してないけどな」", "329000441_7": "「肉体変化まで行うとなると、\\n 少なからず想い出の焼却が伴うワケダが」", "329000441_8": "「あの衰弱した状態では、とても使えないでしょうね」", "329000441_9": "「キャロルちゃん……またそんなに自分を追い込んで……」", "329000441_10": "(立花響……?)", "329000441_11": "「ところで、黒い騎士については何か知っているか?」", "329000441_12": "「黒い騎士……、ですか?」", "329000441_13": "「映像、出します」", "329000441_14": "「見覚えがないです……」", "329000441_15": "「ああ、さっぱりだな」", "329000441_16": "「この黒騎士とやらが、今回の敵なのですか?」", "329000441_17": "「ああ。それもかなりの強敵だ」", "329000441_18": "「彼女たちの情報では、\\n どうやら呪いの力で動いているらしいの」", "329000441_19": "「呪いの力ッ?」", "329000441_20": "「それって、ひょっとしてッ!」", "329000441_21": "「ああ、呪い、剣、そしてキャロル……、\\n その組み合わせで連想できるのは――」", "329000441_22": "「魔剣ダインスレイフ」", "329000441_23": "「ダインスレイフ?」", "329000441_24": "「キャロルが己の目的のため、S.O.N.G.へ送った物です」", "329000441_25": "「それを元に、イグナイトモジュールという\\n 決戦機能をギアに実装できたのですが――」", "329000441_26": "「でもおかしいな。イグナイトの力だったら、\\n ラピスの力で浄化されていとも簡単に破壊されちまっただろ?」", "329000441_27": "「ああ……。我々の場合、その後、愚者の石の力を使って\\n 対消滅バリアコーティングを施し、防ぐことはできたが……」", "329000441_28": "「錬金術師たちが、ファウストローブを纏っていながら、\\n 一方的に押されるといった状況とは、どうも結びつかないな」", "329000441_29": "「イグナイトモジュールなら、\\n 私もそっちからの資料で読んだわ」", "329000441_30": "「確か、イグナイトモジュールで使用していたのは、\\n ダインスレイフの欠片だったわよね?」", "329000441_31": "「はい、そうです」", "329000441_32": "「あの黒騎士は、もしかしたら、欠片じゃなくて、\\n 聖遺物本体を使って構成されているんじゃないかしら?」", "329000441_33": "「つまり、こちらのダインスレイフは完全聖遺物ということかッ!」", "329000441_34": "「呪われた魔剣の完全聖遺物、か……」", "329000441_35": "「確かにそれ程の存在であるならば、\\n 今の私たちのラピスで浄化するのは難しいかもしれない」", "329000441_36": "「ああ。残念ながら、わたしたちが開発したラピスも、\\n 未だ完全な代物ではないからな」", "329000441_37": "(完全ではない……?\\n わたしたちの世界では、完成されているように思えたが……)", "329000441_38": "(こちらの世界のラピスは、未完成ということか?)", "329000441_39": "「世知辛い話だけど、より力が強い方が勝つってところかしら」", "329000441_40": "「真なる完全存在ならば、そんなことはあり得ないワケダ」", "329000441_41": "「だが、我らの錬金術も未だ道半ば、ということだ」", "329000441_42": "「しかし、相手の正体の1つがわかったのは、大きな前進だ」", "329000441_43": "「ええ。あなたたち錬金術師の力と、私たち二課の力を\\n 束ねれば、きっと対抗策が見つかるはずよ」", "329000441_44": "「あら、いいじゃない。\\n こっちも望むところだし」", "329000441_45": "「ああ。あいつを倒さないことには\\n チフォージュ・シャトーも奪回できないワケダ」", "329000441_46": "「チフォージュ・シャトーまであるのかッ!?」", "329000441_47": "「それなら、わたしたちにも手伝わせてくださいッ!」", "329000441_48": "「響くん?」", "329000441_49": "「我々ならばキャロルとチフォージュ・シャトーについて\\n 知悉しています」", "329000441_50": "「だが、君たちの世界は?」", "329000441_51": "「なあに。向こうには頼もしい後輩たちもいるし、\\n 事情を説明すれば、少しの間くらいは大丈夫だと思う」", "329000441_52": "「本来ならば我々の世界の問題だ、と言いたいが……」", "329000441_53": "「ええ。流石に事態が大きくなりすぎたわね」", "329000441_54": "「ありがたく、その申し出を受けさせてもらうとしよう」", "329000441_55": "「承知しました。微力を尽くします」", "329000441_56": "「まあ、大船に乗ったつもりでいてくれって」", "329000441_57": "(キャロルちゃん……)", "329000441_58": "(今度こそ、わかり合いたい。\\n わたしの世界では、最後までわかり合えなかったから……)", "329000441_59": "「先刻からどうした、心配事か?」", "329000441_60": "「え? あ、いえ……。\\n な、なんでもないです」", "329000441_61": "(なんでもないという顔には見えなかったが……)", "329000441_62": "「そうか、ならばいい」", "329000441_63": "「それでは、我々は一旦報告に戻るとする」", "329000441_64": "「ああ。よろしく頼む」" }