{ "328000431_0": "「…………」", "328000431_1": "「随分と浮かない顔をしているわね?」", "328000431_2": "「あ、いえ。別に……」", "328000431_3": "「今頃、あの男はお偉いさんを相手に\\n 面倒な腹の探り合いをしているところかしら」", "328000431_4": "「そうですね……」", "328000431_5": "「あなたも行きたかった?」", "328000431_6": "「……はい、叶うならば」", "328000431_7": "「政府のお偉いさんとの話なんて、\\n ついて行ったって肩がこるばかりでしょ」", "328000431_8": "「わかっているのですが。どうにも居ても立っても居られず……」", "328000431_9": "「わからないわね」", "328000431_10": "「何がですか?」", "328000431_11": "「どうしてあなたが、そこまでこの件に入れ込むの?」", "328000431_12": "「変でしょうか?」", "328000431_13": "「大いにね」", "328000431_14": "「所詮、ここはあなたの世界ではない」", "328000431_15": "「バルベルデの事件の時、あのクリスという子にも言ったけど――」", "328000431_16": "「たとえ姿形、名前が同じだからといって、\\n それはあなたたちの知る人と同じ人物ではないのよ?」", "328000431_17": "「そう……ですが……」", "328000431_18": "「それでも、あの時のケースは\\n まだ理解できなくもないわ」", "328000431_19": "「あの子の両親は、そちらの世界では亡くなっているのでしょう?」", "328000431_20": "「後悔の念や喪失感を埋めるためだというなら、\\n 思い入れも理解できるわ」", "328000431_21": "「わたしも、別世界で、死別した友と再会することができました。\\n その時は、雪音と同じ想いをしました」", "328000431_22": "「あなたたちの世界からの報告書で読んだ、天羽奏の件ね。\\n 経験済みなら話は早いわ」", "328000431_23": "「けれど、今回の緒川という男――\\n 彼は別にそちらの世界で亡くなっているわけでもないでしょう?」", "328000431_24": "「ええ。その通りです」", "328000431_25": "「ならば今回の件は100%こちらの世界の問題。\\n あなたたちが率先して関わるようなものじゃないわ」", "328000431_26": "「……」", "328000431_27": "「もちろん、RN式の奪還を手助けしてくれること自体は\\n とても助かるけれど」", "328000431_28": "「過剰な思い入れは危険だわ」", "328000431_29": "「確かに、これはこの世界の問題です」", "328000431_30": "「ですが、成り行きとはいえ、一度関わってしまった以上、\\n 後から見ないふりはしたくない……」", "328000431_31": "「特にそれが、わたしに関わりある人のことなら。\\n 例えその中身が別の人であっても――」", "328000431_32": "「やれやれ……」", "328000431_33": "「あなたたちは、疲れる性分をしている子ばかりね」", "328000431_34": "「どうしたのッ?」", "328000431_35": "「RN式の反応を検知ッ!」", "328000431_36": "「同時にアルカ・ノイズの反応も多数ッ!\\n 交戦を開始した模様ですッ!」", "328000431_37": "「間が悪いわね」", "328000431_38": "「わたしが行きます」", "328000431_39": "「待ちなさい、1人では危険よ。\\n 次の機会を待ちなさい」", "328000431_40": "「次の機会が必ず来るという保証はありません。\\n 行きますッ!」", "328000431_41": "「まったく、一旦こうと思い込んだら\\n 人の言うことなんて聞きやしない……」", "328000431_42": "「確かにあれは、あの男の血筋よッ!」" }