{ "105001421_0": "(あの時、確かにわたしたちは殺されたはず……、\\n 現代に解き放たれた、超抜の存在に……)", "105001421_1": "「はぁ……はぁ……はぁ……」", "105001421_2": "「遺憾よな。\\n 我が力、かつての万分の一にも満たぬとは……」", "105001421_3": "「ふざけたこと……言わせないゼッ!」", "105001421_4": "「何ッ!?」", "105001421_5": "「ミラアルクちゃんッ!」", "105001421_6": "「一体……どういうわけだゼ……?\\n 身体に漲るこの力……まるで本物の――」", "105001421_7": "「まるで本物の怪物とでも? ああ、そうさな。歪な形であった\\n お前たちを完全な怪物へと完成させたのは、我の力の一摘まみよ」", "105001421_8": "「完全と……完成……」", "105001421_9": "「まさかそれって、\\n もう……人間には戻れないってことなのか?」", "105001421_10": "「愚問である。\\n 完成させるとはそういうことだ」", "105001421_11": "「あぁ……くぅ……うぅ……」", "105001421_12": "「人の群れから疎外される恐怖と孤独は、\\n もはや癒されることはなく……」", "105001421_13": "「ああ、怪物はとうとう、どこまでも異物に……」", "105001421_14": "「気鬱たるッ!\\n ならば我に仕えよ」", "105001421_15": "「…………」", "105001421_16": "「この星の孤独も疎外も、全て我が根絶やしにしてくれるわ」", "105001421_17": "「神よ……」", "105001421_18": "「…………」", "105001421_19": "「ヴァネッサが神と仰ぐなら、\\n わたしとミラアルクも従うであります」", "105001421_20": "「…………」", "105001421_21": "「で? 神様はどうやって、\\n ウチら怪物の孤独や疎外感を拭ってくれるんだゼ?」", "105001421_22": "「知れたこと。\\n この星の在り方を5000年前の形に戻すのだ」", "105001421_23": "「5000年前――、\\n そいつは先史文明ぞっこん期だゼ……」", "105001421_24": "「申し付けたものはどうなっている?」", "105001421_25": "「これで、ありますか?」", "105001421_26": "「傾聴せよ、怪物ども。\\n これより使命を授けてしんぜよう」", "105001421_27": "「現在、本部は鹿児島県、種子島に向かって航行中」", "105001421_28": "「種子島だあ?」", "105001421_29": "「そうだ。\\n 目的地は、種子島宇宙センターとなる」", "105001421_30": "「――ッ……」", "105001421_31": "「先だって風鳴邸付近に出現した巨大構造物、\\n ユグドラシルと呼応するかのように」", "105001421_32": "「月遺跡よりシグナルが発信されているのが確認されました」", "105001421_33": "「まさか、わたしたちにッ!」", "105001421_34": "「月遺跡の調査に行けと言うのデスか?」", "105001421_35": "「検討段階ではそういった話もありました。ですが、今回月に\\n 向かうのは、特別に編成された米国特殊部隊となります」", "105001421_36": "「確かに、あのユグドラシルを放ってはおけないものね」", "105001421_37": "「だからって、こうも簡単に都合付けられるものなのか?\\n 探査ロケットって」", "105001421_38": "「ミスター・ヤツヒロの置き土産だ」", "105001421_39": "「お父様の――」", "105001421_40": "「プレジデントの判断と対応には、感謝に堪えません」", "105001421_41": "「先の反応兵器発射による国際社会からの非難を躱せたのは、\\n ミスター・ヤツヒロが提案した――」", "105001421_42": "「――日米の協調姿勢によるところが大きい。その象徴であった\\n 月ロケットを活用することにどうもこうもあるものか」", "105001421_43": "「――ッ……」", "105001421_44": "「だが、これで借りは返した。あとはせいぜい派手に貸し付けて\\n やるつもりだから、そう思っていてくれたまえ」", "105001421_45": "「はああ……」", "105001421_46": "「諸君らの任務は、3日後に発射が迫る、\\n 月遺跡探査ロケットの警護であるッ!」", "105001421_47": "「敵の襲撃は十分に予想されるッ!\\n 各員、準備を怠るなよッ!」", "105001421_48": "「はい(デス)ッ!」", "105001421_49": "「定時報告。\\n こちら、異常なし」", "105001421_50": "「こちらも異常ありませんッ!」", "105001421_51": "「発射予定時刻まで、あと24時間……、\\n 引き続き警戒にあたります」", "105001421_52": "「それにしても、近くで見るとでっかいデスね……」", "105001421_53": "「うん……内緒だけど、ちょっとだけ月に行けるかもと\\n 期待しちゃった」", "105001421_54": "「アタシもなのデスッ!」", "105001421_55": "「……ん?」", "105001421_56": "「およ?」", "105001421_57": "「え――」", "105001421_58": "「デースッ!?」" }