{ "342000722_0": "「……予想通りだったな。\\n これだと、残っているデータも期待できなそうだ」", "342000722_1": "「引越し業者でも使ったのかってくらい、\\n 物が無くなってるもんね……」", "342000722_2": "「ここを出るときに、ほとんど処分したらしい。\\n 慎重なジルらしい行動なワケダ」", "342000722_3": "「あれ? ここに何もないなら、\\n どうしてアルカ・ノイズの罠を……?」", "342000722_4": "「……ただの嫌がらせなワケダ。\\n 恐らくは協会の錬金術師相手の」", "342000722_5": "「ええッ!? ただの嫌がらせって……」", "342000722_6": "「愉快犯か。鬱陶しい……」", "342000722_7": "「ジルはそういう性格をしているワケダ」", "342000722_8": "「……ジャンヌ・ダルクの記録を見た形跡があるな。\\n 内容は一般的に知られているものとそう変わらないが……」", "342000722_9": "「……あの、ちょっと聞いてもいいかな?」", "342000722_10": "「ジャンヌ・ダルクってフランスの有名な人だよね?\\n なんだっけ、一年戦争とかで活躍した……」", "342000722_11": "「一年ではなく、百年戦争――、\\n その時に活躍した英雄なワケダね」", "342000722_12": "「あれ? そうだっけ? でも百年も戦ったってことは、\\n すっごい長生きだったってこと?」", "342000722_13": "「……戦争が休戦を挟みながら長く続いただけで、\\n ジャンヌ本人が開戦から終戦まで戦っていたわけではない」", "342000722_14": "「確かジャンヌ・ダルク本人は16歳から戦いに出て、\\n 19歳で処刑されたワケダ」", "342000722_15": "「そうなんだ……あれ? でもどうして?\\n 英雄だったのに……」", "342000722_16": "「祖国に裏切られ、敵国のイングランド王国に身柄を渡され、\\n 異端審問の末に火刑に処されたワケダ」", "342000722_17": "「……火刑、か……」", "342000722_18": "「そんな……酷いよ……」", "342000722_19": "「実際、全てジャンヌを殺すために仕組まれたとしか思えない\\n 茶番劇だったワケダが……」", "342000722_20": "「一時期、そのことでサンジェルマンも荒れていたと\\n 小耳に挟んだことがあるワケダ……」", "342000722_21": "「サンジェルマンさんが?」", "342000722_22": "「戦いの時の様子からもしやと思っていたが……。\\n あいつはジャンヌ・ダルク本人と親交があったのか?」", "342000722_23": "「子供の頃のジャンヌを救ったのが、\\n サンジェルマンだったワケダ」", "342000722_24": "「それからジャンヌが騎士となって処刑されるまで、\\n ずっと親交はあったらしいワケダが……」", "342000722_25": "「処刑の場にもいたと局長に聞いたことがあるワケダ。\\n 助けられずに悔やんでいたと」", "342000722_26": "「……協会所属では、助けるなど不可能だろう。\\n そんなことは認められないはずだ」", "342000722_27": "「でも、あのジャンヌさんは、サンジェルマンさんと\\n とても仲良かったようには――」", "342000722_28": "「確かに。\\n 実際にどんな関係だったかまでは知らないワケダが」", "342000722_29": "「あいつが何かしたのかもしれないな。\\n そのまま過去のジャンヌを蘇らせたとは限らない」", "342000722_30": "「確かにジルなら……考えられるワケダ……」", "342000722_31": "「そういえば、ジャンヌさんってあの人が蘇らせたんですよね。\\n それってこの研究所でやったのかな?」", "342000722_32": "「……いや、アカシックレコードへのアクセスなど、\\n この研究所の設備では不可能なワケダ」", "342000722_33": "「恐らくは奴の根城、チフォージュ城で行ったはずなワケダ」", "342000722_34": "「オレのチフォージュ・シャトーのモデルになった城だったか」", "342000722_35": "「チフォージュ・シャトーは元々わたしのものなワケダ」", "342000722_36": "「それなら、あの人たちはその城にいるんじゃ?」", "342000722_37": "「もちろんその可能性が1番高いワケダが……、\\n ジルはあの城を空間の狭間に隠すことができるからな」", "342000722_38": "「だが、城への出入りを行うゲートはどこかにあるはずだ」", "342000722_39": "「だからそのゲートがあるかもしれない場所を探しているワケダ」", "342000722_40": "「……二課からだ」", "342000722_41": "「――はい、響です」", "342000722_42": "「非常事態が発生した。\\n すぐにこちらに戻ってきてくれッ!」" }