{ "337000611_0": "煤け汚れた空が哭く", "337000611_1": "(襲撃に損傷した本部の修理は、ほぼ完了……\\n だが――……)", "337000611_2": "「――任務完了。\\n ただ今、帰還しました」", "337000611_3": "「管制支援の難しい中での出動――\\n ご苦労だったな」", "337000611_4": "「みんなが不在の状況で、\\n 超常の事件が頻発している以上、仕方のない事だけど…」", "337000611_5": "「まさか、現代に建立される黄金の眼の大仏に、\\n あんな秘密が隠されていたなんて、思いもよらなかったデスよ」", "337000611_6": "「そちらの進展はどうなのかしら?」", "337000611_7": "「ギャラルホルンのゲートに飲み込まれ、\\n 世界より消失した装者三名の消息は、依然、不明――」", "337000611_8": "「藤尭の提案で、ギアからのシグナル探知範囲を\\n 半径40万キロ超に拡大してみたのだが……」", "337000611_9": "「確認できたのは、\\n やはり『この世界には存在していない』という事実にすぎない」", "337000611_10": "「メチャクチャな拡張に金もかかったし、\\n 協力してくれた各国機関の手前、無駄にしたくないのだが……」", "337000611_11": "「司令、ギャラルホルンの\\n 機能チェックが完了しました」", "337000611_12": "「装者サルベージの手立てが見つからない現状――\\n エルフナイン君には吉報を期待したいのだが……」", "337000611_13": "「ごめんなさい。\\n いい報せではありません」", "337000611_14": "「いや、さすがにこちらの虫が良すぎたな。\\n すまない。気にしないでほしい」", "337000611_15": "「……はい。\\n では、チェックの結果を報告します」", "337000611_16": "「一見して、大きな損傷が見られなかったギャラルホルンですが、\\n スキャンの結果、内部に異常を確認しました」", "337000611_17": "「機能停止とまではいかないものの、\\n 数多に存在する並行世界間を繋ぐ事ができなくなっており――」", "337000611_18": "「例えるなら、\\n 今のギャラルホルンは休眠状態となっています」", "337000611_19": "「休眠?\\n 眠っているのか?」", "337000611_20": "「了子さんが残してくれた資料から推察するに、おそらくは……\\n 機能を一時停止して、損傷個所の自己修復中だと考えられます」", "337000611_21": "「さながらヨガの眠りといったところだな」", "337000611_22": "「でも、それなら――修復が完了次第、\\n 並行世界間を行き来する機能は復活するんじゃないかしら?」", "337000611_23": "「――たしかに」", "337000611_24": "「およ? いきなり解決したっぽいデスよ?」", "337000611_25": "「ギャラルホルンの世界間渡航機能については、\\n いずれ時間が解決してくれると見込めます。ですが――」", "337000611_26": "「数多に存在するとされる並行世界――\\n 3人は、そのいずこに飛ばされてしまったのでしょうか?」", "337000611_27": "「――あッ!?」", "337000611_28": "「3人の位置を特定できない以上、\\n 砂漠の中から砂金の一粒を摘まむより困難だという事ね」", "337000611_29": "「…………」", "337000611_30": "「最初にお伝えした通り、\\n いい報せではないというのは、そういう事なのです」", "337000611_31": "「…………」", "337000611_32": "「……すみません……\\n ボクでは何の力にも――」", "337000611_33": "「いや、助かった」", "337000611_34": "「――えッ!?\\n ですが、何も状況に好転は――」", "337000611_35": "「そうだ。ギャラルホルンの機能不全と、\\n たとえ機能が修復されても困難はなお続くという状況――」", "337000611_36": "「それらがハッキリしただけでも収穫だ」", "337000611_37": "「……司令……」", "337000611_38": "「そうでなければ俺たちは、一見、無傷なギャラルホルンを前に\\n 楽観的・希望的観測をしてしまい、時間を浪費しかねなかった」", "337000611_39": "「だが、エルフナイン君のおかげで、\\n 座して待つことが正解ではないとあらためて気づかされたのだ」", "337000611_40": "「ありがとう」", "337000611_41": "「……そう、ですね……」", "337000611_42": "「状況はただ、腰が抜けそうなくらい絶望的に困難というだけで、\\n 完全に手詰まりというわけではありませんッ!」", "337000611_43": "「もう少し頑張ってみますッ!!」", "337000611_44": "「頼んだぞ」", "337000611_45": "「エルフナインに任せておけば、\\n きっと何とかなると信じられるのデスッ!」", "337000611_46": "「心配なのは、\\n ちょっと頑張りすぎるところくらいだし」", "337000611_47": "「あ、心配といえば未来さん、お見舞いに行ってるんデスよね?\\n あっちもこっちも漏れなく心配デスけど……」", "337000611_48": "(響たちが姿を消して、しばらくして――\\n 友達みんなが同じタイミングで倒れちゃうなんて……)", "337000611_49": "(まさか、どこかの世界のみんなが――)", "337000611_50": "(…………)" }