{ "329001021_0": "「結構経ったね、ここに君が戻ってから」", "329001021_1": "「どうかな、その後の調子は?\\n 受けてないかね、嫌がらせとか」", "329001021_2": "「別に……」", "329001021_3": "「周囲の目も言動も、関係ない。\\n ただ粛々と、課せられた任務をこなすだけだ」", "329001021_4": "「君らしいね。\\n では聞くとしようか、今回の報告を」", "329001021_5": "「アルカ・ノイズの兵器化を行った\\n はぐれ錬金術師集団の調査報告は、ここに書いてある通りだ」", "329001021_6": "「ほう……。沢山あるね、思ったよりも」", "329001021_7": "「聞かせてくれないか、概要を」", "329001021_8": "「書類に書いてあるものを、\\n なぜわざわざ口頭で聞かせる必要がある?」", "329001021_9": "「聞きたいんだよ。君の口から」", "329001021_10": "「調査し報告を上げるまではオレの任務、\\n 報告書を受領し把握するのは上の者の責務だろう?」", "329001021_11": "「なるほど。耳が痛いね、真実というものは」", "329001021_12": "「では拝読するとしようか、自分の目で、しっかりとね」", "329001021_13": "「…………」", "329001021_14": "「なるほどね……」", "329001021_15": "「よく調べたものだね、これだけの量を、この短期間で」", "329001021_16": "「一目瞭然だね、はぐれどもの足取りが」", "329001021_17": "「…………」", "329001021_18": "「……ん?」", "329001021_19": "「……ふむ」", "329001021_20": "「……聞いてるかな、キャロル?」", "329001021_21": "「……あ、ああ。\\n それで、今後も監視を続行するのか?」", "329001021_22": "「ああ、そうだね。\\n 頼んだよ、引き続き」", "329001021_23": "「…………」", "329001021_24": "「どうした、キャロル?」", "329001021_25": "「――はッ!?」", "329001021_26": "「倒れそうだったよ、頭から」", "329001021_27": "「眠そうだね、随分と」", "329001021_28": "「取っているのかい? 休息を」", "329001021_29": "「それはただの質問か、\\n それとも返答を命令で強制しているのか?」", "329001021_30": "「質問の方だよ、強いて言うなら」", "329001021_31": "「ならば、心配されることじゃない」", "329001021_32": "「つれないね、相変わらず」", "329001021_33": "「報告は以上だ。\\n それでは失礼させてもらう」", "329001021_34": "「……キャロル」", "329001021_35": "「……お前ら」", "329001021_36": "「あら、キャロルじゃない。お仕事中?」", "329001021_37": "「仕事でもなければ来るはずないだろう」", "329001021_38": "「ま、それはそっか」", "329001021_39": "「どういう意味だい? それは」", "329001021_40": "「あ、いえ、なんでもないですよ~」", "329001021_41": "「……日頃の行いというワケダ」", "329001021_42": "「いつまでも井戸端話をしている暇はない」", "329001021_43": "「待て。相当な疲労が顔に表れているぞ?」", "329001021_44": "「夜中まで何をコソコソやっているワケダ」", "329001021_45": "「あーしたちの手が必要かしら?」", "329001021_46": "「うるさい、お前たちには関係ない」", "329001021_47": "「……これは、オレがやるべきことだ」", "329001021_48": "「そうだな。\\n だが、手伝えることもあると思うぞ」", "329001021_49": "「なんだと?」", "329001021_50": "「プレラーティ」", "329001021_51": "「ああ、少し癪だが。\\n 受け取るがいいワケダ」", "329001021_52": "「これはッ!? 聖杯に、剣……?」", "329001021_53": "「程よく魔力を帯びたいわくつきの代物よ」", "329001021_54": "「オートスコアラーの触媒に足りなかったのは、\\n その2つでよかったか?」", "329001021_55": "「お前ら……」", "329001021_56": "「勘違いしないでほしいワケダ。\\n これは他の任務中、偶然見つけた物」", "329001021_57": "「お前なら、正しく使えるだろう?」", "329001021_58": "「…………」", "329001021_59": "「……ああ。礼を言う」", "329001021_60": "「相変わらずツンツンしてるわねー」", "329001021_61": "「って、プレラーティは何むくれてんのよ?」", "329001021_62": "「わたしはシャトーの件を、まだ許していないワケダ。\\n なのに、さらなるほどこしまで……」", "329001021_63": "「もう。シャトーは戻ってきたんだから、\\n いい加減許してあげなさいって」", "329001021_64": "「ああ。\\n 彼女も真面目に任務をこなしているしな」", "329001021_65": "「それはそれ、これはこれなワケダ」", "329001021_66": "「ああ、そうだったッ!\\n 忘れていたよ、伝えるのを」", "329001021_67": "「何をでしょうか?」", "329001021_68": "「チフォージュ・シャトーについてだよ、もちろん」", "329001021_69": "「管理することになったよ、協会で。\\n 今後は正式にね」", "329001021_70": "「だから供出するように、明日までに」", "329001021_71": "「なッ!? どうしてそうなるワケダッ!?」", "329001021_72": "「アレは大きすぎる。影響力があまりにね」", "329001021_73": "「だから置かねばね、管理下に。しっかりとね」", "329001021_74": "「あーらら、ご愁傷様」", "329001021_75": "「首席研究員として断固抗議するワケダッ!」", "329001021_76": "「あれはわたしが長年心血を注いで設計した\\n 最高傑作なワケダッ!」", "329001021_77": "「仕方がない、拒否するならば。\\n 破壊しよう、その時は。跡形も残さずね」", "329001021_78": "「そ、そんな……、\\n サンジェルマンからも何か言ってやってほしいワケダッ!」", "329001021_79": "「……局長命令だ、諦めるんだ」", "329001021_80": "「諦められるかッ!\\n 絶対に破壊などさせないワケダッ!」", "329001021_81": "「なんだが、今度はプレラーティが、\\n チフォージュ・シャトーを持って、出ていっちゃいそう……」", "329001021_82": "「ふう……終わったか……」", "329001021_83": "「これでやっと、今日も取り掛かれる」", "329001021_84": "(寝食を削って修復を続けてはいるが……。\\n まだまだ、先は長そうだ)", "329001021_85": "(だが、触媒として足りなかった聖杯と剣が手に入った。\\n これで、大きく前進できる)", "329001021_86": "「ふあああ……」", "329001021_87": "「お前たちには……言いたいことが……」", "329001021_88": "「待っていろよ……。\\n すぐに……もと通りに……」", "329001021_89": "「…………」", "329001021_90": "「マスターったら、起きてくださいよー」", "329001021_91": "「そんなところで眠られたら、風邪をひきますわよ?」", "329001021_92": "「ん……ここは……?」", "329001021_93": "(チフォージュ・シャトー……か?)", "329001021_94": "(それに、その声は……)", "329001021_95": "「お目覚めですか、マスター?」", "329001021_96": "「お前たち……直ったのか?」", "329001021_97": "「なあに言ってるんですか、マスター?」", "329001021_98": "「誰も壊れてないゾ?」", "329001021_99": "「派手に寝ぼけているのでは?」", "329001021_100": "(ああ……そうか、これは夢なのだな)", "329001021_101": "「ところでガリィ、このリボン、結べないんだゾ?」", "329001021_102": "「まあミカちゃんったら、無意味にごつい手してるものねえ」", "329001021_103": "「可愛く結んでくれだゾ?」", "329001021_104": "「はいはい、ちょっと待ってね――っと」", "329001021_105": "「こんなものかしらね?」", "329001021_106": "「ありがとうだゾ、ガリィッ!」", "329001021_107": "「ふふーん。\\n オシャレのことならこのガリィちゃんにお任せあれ♪」", "329001021_108": "「それにしても退屈だ。\\n 何か派手なことはないものか?」", "329001021_109": "「まあ、レイアったらそればっかりね」", "329001021_110": "「それでは、また舞踏会でも開きましょうか?」", "329001021_111": "「ふむ。その提案、なかなか悪くない」", "329001021_112": "(戦いと無縁な話ばかり……平和なものだ)", "329001021_113": "(あんなことのために作らなければ、\\n こいつらにもこういう在り方があったのかもしれないな……)", "329001021_114": "「フ……」", "329001021_115": "「どうしたんですの、マスター?」", "329001021_116": "「なに思いだし笑いしてるんです?」", "329001021_117": "「あたしのリボンが似合ってなかったとかだゾ?」", "329001021_118": "「まだ派手に寝ぼけているとか?」", "329001021_119": "「いや……そうじゃない。\\n そうじゃないんだ……」", "329001021_120": "「レイア、ファラ、ミカ、ガリィ……ありがとう」" }