{ "326001241_0": "「了子さんッ!」", "326001241_1": "「どうしたの奏ちゃん。そんな血相変えて」", "326001241_2": "「この前のアレ、貸してくれないか?\\n 向こうで急ぎ必要なんだッ!」", "326001241_3": "「アレとはなんのことだ……?」", "326001241_4": "「なんだか大変な事態みたいね。\\n まずは、向こうの詳しい話を聞かせてちょうだい」", "326001241_5": "「……という状況で、ガングニールが必要なんだ。\\n だから、この前作ってたペンダントを貸してくれないか?」", "326001241_6": "「なるほどね。ガングニールの共鳴効果……。\\n 聞く限りじゃ、その可能性は高いわね」", "326001241_7": "「それはそうと……了子くん、いつの間にそんなものを……」", "326001241_8": "「いい女には秘密があるものよ」", "326001241_9": "「それで、貸してもらえるのか?」", "326001241_10": "「もちろんよ。弦十郎くんもいいわよね?」", "326001241_11": "「ああ。そんなものがあるとは今の今まで知らなかったが……。\\n とにかく、必要な状況というのは理解した」", "326001241_12": "「どちらにしても、奏が使う予定の物だ。\\n それに、向こうの世界にも、響くんにも大きな恩がある」", "326001241_13": "「彼女を救うためというなら、是が非でもない。\\n 奏、必ず響くんを助けるんだッ!」", "326001241_14": "「ああ、言われるまでもないッ!」", "326001241_15": "「これは……ガングニール?」", "326001241_16": "「ああ。これがあればアクセスもなんとかなるだろ?」", "326001241_17": "「これをどこで……」", "326001241_18": "「まさか、奏さんの世界の櫻井さんが……?」", "326001241_19": "「詳しい話は後でするよ。\\n それより、急いであいつを助けにいこう」", "326001241_20": "「Granzizel bilfen gungnir zizzl――」", "326001241_21": "「またガングニールを纏う時が来るとはね……」", "326001241_22": "「奏さん、マリアさん……。\\n どうして、ガングニールを……?」", "326001241_23": "「ガングニールなら疲労が軽減できる可能性が\\n あったから、わたしもガングニールで頑張らせてもらうわ」", "326001241_24": "「疲労……」", "326001241_25": "(やっぱりみんな、わたしのために、身を削って……)", "326001241_26": "「どうしたんだい? 元気ないじゃないか」", "326001241_27": "「……このまま、わたしを助けるために、わたしの中に\\n 入り続けたら、みんな傷ついて、倒れて――」", "326001241_28": "「ストップ。だから何? 帰ってとでも言うつもり?」", "326001241_29": "「……」", "326001241_30": "「そうしてあなたはどうするの?\\n 誰の助けも受けず、1人で解決できるとでも?」", "326001241_31": "「それは――」", "326001241_32": "「……うぬぼれじゃないなら自己犠牲?\\n どちらにしても、はいそうですかと聞けるわけないでしょう」", "326001241_33": "「……」", "326001241_34": "「逆の立場なら、お前はどうする?」", "326001241_35": "「仲間の危機に、何もできないことの方が、自分が傷つくより\\n よっぽど辛い。そうだろ?」", "326001241_36": "「でも……」", "326001241_37": "「『でも』も『だけど』もなしよ。とにかく、わたしたちは\\n あなたを1人にするつもりなんてないんだから」", "326001241_38": "「そうだな。こうなったら一蓮托生だろ?\\n 1人じゃなく、3人で行こう」", "326001241_39": "「マリアさん、奏さん……」", "326001241_40": "「さあ、行くわよ。ガングニール装者がこうして揃ったんだもの。\\n 怖い物なんてないでしょ」", "326001241_41": "「ああ、3本揃った槍の力、\\n アンタを蝕む『何か』にも見せてやろう」" }