{ "101000722_0": "「いいぞッ! 飯食って映画見て寝る……それが男の鍛錬だッ!」", "101000722_1": "「わたし、女です、師匠ッ!\\n あとシミュレータも使ってますッ!」", "101000722_2": "「細かい事を気にするなッ! よし、次はランニングと\\n サンドバッグ打ちだッ! ついてこいッ!」", "101000722_3": "「わかりました、師匠ッ!」", "101000722_4": "「ふふッ、なかなか面白い師弟コンビね~。あの2人」", "101000722_5": "「はッ! ふッ!」", "101000722_6": "「そうじゃないッ!\\n 稲妻を喰らい、雷を握りつぶす様に打つべしッ!」", "101000722_7": "「言ってる事、全然わかりませんッ! でも、やってみますッ!」", "101000722_8": "「…………。――はあッ!」", "101000722_9": "「わぁ……やりましたッ!」", "101000722_10": "「こちらも、スイッチを入れるとするか……続けるぞッ!」", "101000722_11": "「……」", "101000722_12": "「……どうした、翼?」", "101000722_13": "「……え、ここは――」", "101000722_14": "「おいおい、どうしたんだよ。こんな真昼間から寝てたのか?\\n それとも、あたしとの訓練はそんなに退屈か?」", "101000722_15": "「そ、そんなわけないッ! 奏との時間が退屈だなんてッ!\\n さ、さあ、続きをしよう、奏ッ!」", "101000722_16": "「いーや、そろそろ休憩だ。翼はもう少し力を抜かないとな」", "101000722_17": "「で、でも……」", "101000722_18": "「翼は真面目すぎるんだよ。あんまり真面目すぎると、\\n いつかポッキリ行っちゃうぞ?」", "101000722_19": "「奏はわたしに意地悪だ……」", "101000722_20": "「翼にだけはちょっとイジワルかもな。いいじゃないか?\\n それとも、あたしが嫌いになったかい?」", "101000722_21": "「……そんな事、ないけど……もう……」", "101000722_22": "(そうだ――わたしは奏と、こんな風に過ごして――)", "101000722_23": "「はああああ――ッ! もらったッ!」", "101000722_24": "「すごい、さすが奏ッ!」", "101000722_25": "「ああ、任せとけってッ! さあ、残りも片付けるぞッ!」", "101000722_26": "「うんッ!」", "101000722_27": "(そう、この頃のわたしは、奏の背中を追いかけてばかりで――)", "101000722_28": "「……おい、大丈夫か」", "101000722_29": "「……ありがとう。瓦礫に埋まっても歌が聞こえていた。\\n だから、頑張れた……」", "101000722_30": "「あ、ああ……」", "101000722_31": "(あたしの歌が……誰かの力に……)", "101000722_32": "「奏?」", "101000722_33": "「……いや、何でもないよ」", "101000722_34": "「なあ、翼……。\\n 誰かに歌を聞いてもらうのは、存外気持ちのいいものだな」", "101000722_35": "「……どうしたの、唐突に?」", "101000722_36": "「別に。……ただ、この先もずっと、翼と一緒に唄っていきたい\\n と思ってね」", "101000722_37": "「……うん」", "101000722_38": "(そうして、わたしたちはツヴァイウィングとなって――)", "101000722_39": "「あたしとあんた、両翼揃ったツヴァイウィングはどこまでも\\n 遠くへ飛んで行けるッ!」", "101000722_40": "「どんなものでも越えて見せるッ!」", "101000722_41": "(――あの日、わたしは片翼となった)", "101000722_42": "(1人じゃ、飛べないよ……。苦しいよ……奏……)", "101000722_43": "「……翼」", "101000722_44": "(違う……それじゃダメなんだ。\\n わたしは、奏の遺志を、奏の為に1人でも――ッ!)", "101000722_45": "「片翼だけでも飛んでみせる……どこまででも飛んでみせるッ!\\n だから――ッ!」", "101000722_46": "「だから笑ってよ……奏ッ!」" }