{ "308000111_0": "端月の神隠し", "308000111_1": "「すっごく、人が多かったねッ!」", "308000111_2": "「初詣だし、仕方ないんじゃないかな」", "308000111_3": "「そうだな。年明け早々だから、こんなものだろう」", "308000111_4": "「こうしてみんなで神社に参拝するなんて、\\n 初めてね」", "308000111_5": "「なんだか不思議な感じデス」", "308000111_6": "「でも、これも日本の古きよき風習だと思う」", "308000111_7": "「あたしもこっちに来て最初は少し驚いたっけな」", "308000111_8": "「あれ? そうなの?\\n 初詣ってどこでもするものじゃないの?」", "308000111_9": "「そもそも神社って海外にあるのかな……?」", "308000111_10": "「無くは無いわよ。\\n 分祠された日本の神社がいくつかある程度だけどね」", "308000111_11": "「お正月は楽しい事がたくさんデスッ!\\n 美味しいおせち料理もありますしッ!」", "308000111_12": "「おせちって、どこかで買ったの?」", "308000111_13": "「頑張って作りました」", "308000111_14": "「さすが調よね。どれも美味しかったわ……」", "308000111_15": "「デースッ! あれはもう、お金が取れるレベルデスッ!」", "308000111_16": "「……そ、そんなことないよ」", "308000111_17": "「うう……食べてみたい……」", "308000111_18": "「響、よだれ出てるから。ほら、これで拭いて?」", "308000111_19": "「ふむ、おせちか……ここ最近はあまり食べた覚えが無いな」", "308000111_20": "「確か実家はかなりデカいんだよな?\\n だったら毎年豪勢なおせちとか出るんじゃないのか?」", "308000111_21": "「いや……ほとんど家には帰れてないんだ。\\n 年末年始は毎年何かと仕事も多いからな……」", "308000111_22": "「そうね。\\n まあ、アーティストにとっては色々稼ぎ時だもの」", "308000111_23": "「人気者ってのも大変だな」", "308000111_24": "「こうしてみんなと過ごす時間を取れただけ、\\n 今年は幾分か良い方ではあるが」", "308000111_25": "「できたマネージャーさんが気を利かせてくれたんでしょ」", "308000111_26": "「そうだな。おかげでこうしてゆっくりできている。\\n 初詣にも来ることが出来たしな」", "308000111_27": "「ああーッ! そうだったッ!」", "308000111_28": "「うおッ!? なんだよ、いきなりデケー声出して」", "308000111_29": "「着物ッ! 何で誰も着てこないかなあ……。\\n みんなの晴れ着姿、見たかったのにッ!」", "308000111_30": "「そういうおまえだって普通の洋服じゃねーか」", "308000111_31": "「だってこの後、S.O.N.G.に寄るわけだし」", "308000111_32": "「響……みんな予定一緒だよ?」", "308000111_33": "「ああ、そっかッ!?\\n それじゃ着てこないよね、あはは……」", "308000111_34": "「そうだな。\\n 初詣だけが目的なら、着物もいいかも知れないが――」", "308000111_35": "「翼は特に似合いそうだものね」", "308000111_36": "「見たいなー、翼さんの着物姿ッ!」", "308000111_37": "「絶対、ヤマトナデシコデスッ!」", "308000111_38": "「すごく似合いそう」", "308000111_39": "「そ、そうだろうか?」", "308000111_40": "「翼の家は古い名家だし、\\n 代々伝わる振袖とかもあるんじゃない?」", "308000111_41": "「ああ、確かにいくつかあるな。\\n ほとんどは風鳴の家に置いたままになっているが――」", "308000111_42": "「……ん? 振袖……」", "308000111_43": "「どうかしたの?」", "308000111_44": "「いや、大したことじゃない。\\n ただ、振袖と聞いてなにか懐かしい物を感じて……」", "308000111_45": "「何か思い出でもあるの?」", "308000111_46": "「それは――いや、気にしないでくれ」", "308000111_47": "「それより、お参りの時、みんなは何を願ったんデスか?\\n アタシは――」", "308000111_48": "「切ちゃんストップ。\\n 願い事は人に言うと叶わないんだよ?」", "308000111_49": "「な、なんデスとッ!?\\n ……危ないところだったデースッ!」", "308000111_50": "「どうせおやつ2倍とかそんなんだろ」", "308000111_51": "「わたしはご飯2倍の方がいいッ!」", "308000111_52": "「もう、響ったら……」", "308000111_53": "「食事は全ての基本だからな。\\n 偏っていては本末転倒だが」", "308000111_54": "「そうね。\\n 調も切歌もちゃんとバランスよく食べなきゃだめよ?」", "308000111_55": "「来たか。正月早々、すまないな」", "308000111_56": "「問題ないわ」", "308000111_57": "「現状はまだ調査中ではあるのだが、\\n 少々、気になる事件が起きていてな……」", "308000111_58": "「気になる事件?」", "308000111_59": "「はい、とある古い神社の周辺で、『神隠し』が\\n 起きているようなんです」", "308000111_60": "「『神隠し』とは穏やかではないな……」", "308000111_61": "「実際、超常の現象が疑われるような証言などが出ている。\\n しかし、本来ならまだ装者が出る段階ではないのだが――」", "308000111_62": "「周囲で未確認のエネルギー反応が検知されているんです。\\n しかもそれが段々と強まっていて……」", "308000111_63": "「そう言う事だ。不測の事態への万全を期すために、\\n おまえたちにも現場入りしてもらいたい」", "308000111_64": "「ただ、何が起こるか分からない。\\n 十分に注意した上で、任務に臨んでくれ」", "308000111_65": "「ここがその社ね……見た限りでは何の変哲もないようだけど」", "308000111_66": "「ごくごく普通に見えるデス」", "308000111_67": "「うん、変なところとかないよね」", "308000111_68": "「しかし全く人の気配も無いな……」", "308000111_69": "「S.O.N.G.の避難誘導があったからじゃないですか?」", "308000111_70": "「いや、それ以前から人がほとんど訪れていないんだろう。\\n 忘れ去られた神社、といったところか……」", "308000111_71": "「なんかホラー映画とかにありそうデス」", "308000111_72": "「へ、変なネーミングとか付けんなよなッ!」", "308000111_73": "「郊外にひっそりと佇む、忘れ去られた神社……\\n その社で起こる不可解な神隠し……みたいな感じかな?」", "308000111_74": "「おお、それっぽいデスッ!」", "308000111_75": "「だからやめろって言ってんだろッ!」", "308000111_76": "「…………」", "308000111_77": "「……うん? 立花、何か言ったか?」", "308000111_78": "「え? 何も言ってませんけど……」", "308000111_79": "「みなさん、気を付けてくださいッ!\\n 聖遺物に似たエネルギー反応が――」", "308000111_80": "「――ッ!? 何か来るわッ!」", "308000111_81": "「な、なんデスか、あれッ!」", "308000111_82": "「ノイズでもないし……変な敵……?」", "308000111_83": "「危ねーッ! 何しやがるッ!」", "308000111_84": "「何かは分からないが、こちらに敵意を持っているのは\\n 間違いないようだ」", "308000111_85": "「Imyuteus amenohabakiri tron」", "308000111_86": "「――ならば、この剣にて斬り払うのみッ!」" }