{ "355000511_0": "自動人形とシンフォギア装者", "355000511_1": "「パパッ!」", "355000511_2": "「キャロル、どうしたんだい?」", "355000511_3": "「台所のリンゴが1つなくなってるんだけど、\\n パパが食べちゃったんでしょう」", "355000511_4": "「お料理に使うつもりで用意しておいたのに、\\n 勝手に食べられたら困っちゃうッ!」", "355000511_5": "「ごめんごめん。\\n 決して、食べてしまったわけじゃないんだ」", "355000511_6": "「あれ?\\n パパの机の上にあるの……なあに?」", "355000511_7": "「これがそのリンゴさ。\\n 錬金術で解析、分解、再構築して作ったブローチなんだよ」", "355000511_8": "「ブローチ? これが?」", "355000511_9": "「変かな?\\n 一応、リンゴをデザインしているつもりなんだけど……」", "355000511_10": "「ちょっと、ゲージュツ的センスに欠ける、って感じかな」", "355000511_11": "「ハハハ、これは手厳しいね」", "355000511_12": "「あッ!\\n もしかして、わたしに作ってくれたのッ!?」", "355000511_13": "「悪いけど、これは違うんだ。\\n 友人への贈り物なんだよ」", "355000511_14": "「お友だち?\\n パパって、お友だちいたの?」", "355000511_15": "「たくさんじゃないけどね。\\n パパにも仲の良い友達ぐらいいるんだよ」", "355000511_16": "「ふーん、こっそりプレゼントなんて作って、\\n なんか怪しい……」", "355000511_17": "「いやいやッ! 決してやましい関係ではないよッ!\\n なんて言ったらいいのかなぁ」", "355000511_18": "「パパが研究で目指している理想と、\\n その人の理想が近いところにあるんだよ」", "355000511_19": "「彼と僕は全然似ていないけれど、\\n だから気があったんだろうな」", "355000511_20": "「男の人なんだ……。\\n だったら、一緒に研究すればいいのに」", "355000511_21": "「彼もなかなか、忙しい人だからね。\\n たまに会うくらいしかできないんだよ」", "355000511_22": "「そっかッ!\\n だからプレゼントなんだねッ!」", "355000511_23": "「ああ。彼はね、完全と完成されている。\\n だけどだからこそ、危うい……」", "355000511_24": "「――?\\n どういうこと?」", "355000511_25": "「完全ゆえに、1人きりでは\\n 道を見失ってしまうことがあるってことさ」", "355000511_26": "「だって、彼も『人間』なんだからね」", "355000511_27": "「パパ、さっきから話が難しいよ……」", "355000511_28": "「ああ、ごめん。つまりね、\\n その人が将来、すごく困ったことになった時――」", "355000511_29": "「僕が近くにいて、その人を助けてあげられるとは限らない。\\n いわばこのブローチは、僕の代わりだ」", "355000511_30": "「彼が迷ってしまったときに\\n 正しい見方を取り戻すきっかけになる……」", "355000511_31": "「僕に語ってくれた彼の想いを忘れないように、\\n これを作ったんだよ」", "355000511_32": "「うんうん、完璧にわかったわッ!」", "355000511_33": "「本当かなぁ」", "355000511_34": "「本当だもんッ!」", "355000511_35": "「その人には必要なのかもしれないけど、\\n わたしには、そのリンゴが無くても大丈夫ね」", "355000511_36": "「そうかい?」", "355000511_37": "「だって、わたしには本物のパパがいるもんッ!」", "355000511_38": "「ああ、そうだね。\\n 僕は、いつまでも君の傍に――」", "355000511_39": "「これは、夢……?」", "355000511_40": "「オレの……いつかの想い出なのか……?」" }