{ "349000831_0": "「あ、あなた、本当にセレナなの?」", "349000831_1": "「はい、そうですよ。\\n セレナ・カデンツァヴナ・イヴです」", "349000831_2": "「でも、その姿は……」", "349000831_3": "「まさか、この世界のあなたは\\n わたしと同じ『呪い』を受けてしまったのッ!?」", "349000831_4": "「いいえ、わたしが実年齢通りの見た目じゃないのは、\\n 何年もコールドスリープに入っていたからなんです」", "349000831_5": "「……コールドスリープ……」", "349000831_6": "「あなたが子供の姿なのは、違う理由があるんですね。\\n その『呪い』について、聞いてもいいでしょうか……?」", "349000831_7": "「聞かれたところで、\\n 詳しいことはまだ何もわかっていないわ」", "349000831_8": "「かつて、わたしの世界が世界蛇の攻撃を受けたとき――、\\n わたしたちがいた施設、F.I.S.にウロボロスが襲撃してきたわ」", "349000831_9": "「セレナとわたしもあの男に殺されそうになって、だけどあの男は\\n 殺す代わりに、わたしにこの『呪い』をかけて去った」", "349000831_10": "「なんのためにかはわからない。でもそれ以来、\\n わたしの時は止まってしまったのよ」", "349000831_11": "「そんなことが、あったんですね……」", "349000831_12": "「本当に、最悪な呪いよ……。\\n こんなちっぽけな手足で何が護れるっていうの」", "349000831_13": "「わたしなんかが手を出して、\\n 今度こそ取り返しのつかないことになったら……」", "349000831_14": "「だからわたしは、戦うのが怖い……。\\n みんなと一緒に戦うのが、たまらなく怖いの……」", "349000831_15": "「……」", "349000831_16": "「ごめんなさい、初対面なのに。あなたがあまりにも昔の\\n セレナに似ているから、ついぶちまけてしまったわ」", "349000831_17": "「……わたし、最低よね。今もみんなは戦っているのに。\\n わたしは、みんなの隊長なのに……」", "349000831_18": "「……聞いてください。\\n わたしはこの世界のセレナじゃないんです」", "349000831_19": "「えッ……?」", "349000831_20": "「この世界のわたしは、セレナ・カデンツァヴナ・イヴは\\n もう亡くなっているんです……」", "349000831_21": "「わたしも話だけしか聞いてませんが、\\n 姉さんのことを護って、そのまま……」", "349000831_22": "「そ、そんな……」", "349000831_23": "「……わたしも同じなんですよ。\\n わたしの世界のマリア姉さんも、わたしを護って亡くなりました」", "349000831_24": "「……」", "349000831_25": "「わたしはマリア姉さんに。\\n こちらのマリア姉さんはわたしに……」", "349000831_26": "「わたしたちは生き延びることはできましたが、\\n 同時に、1番大切な人を護ることができなかったんです」", "349000831_27": "「今はこうやって時々、この世界にお邪魔して、\\n マリア姉さんと絆を結ぶことができている……」", "349000831_28": "「でも、どうしたって姉妹にはなれない。だって、\\n 目の前にいるあの人はわたしのマリア姉さんじゃないんです」", "349000831_29": "「……」", "349000831_30": "「だから、司令さんからおふたりのことを聞いたとき、\\n 正直、羨ましいって思いました」", "349000831_31": "「羨ましい?」", "349000831_32": "「だって、本当の姉妹として一緒にいられるんですよ。\\n わたしもそんな幸せな日々を、たくさん過ごしたかった」", "349000831_33": "「だからわたしも、初対面で失礼かもしれませんが、\\n 言わせてもらいます」", "349000831_34": "「どうして行かないんですかッ!」", "349000831_35": "「だって、子供のわたしの力じゃ……」", "349000831_36": "「大人とか子供とか、力があるとかないとか、\\n そんなことは関係ないんですよ」", "349000831_37": "「もし今行かなかったら、あなたの大切な人と永遠に\\n 会えなくなってしまうかもしれないんです」", "349000831_38": "「――ッ!」", "349000831_39": "「大事なのは、力なんかじゃありません。\\n 今、自分がどうしたいか、それが全てなんですから」", "349000831_40": "「わたしは……」", "349000831_41": "「……ごめんなさい。いろいろと生意気に言ってしまって。\\n この小型機を使えば、みんなのところへ行けるんですよね」", "349000831_42": "「あなた、まさか……」", "349000831_43": "「わたしはみんなを護りたいから、行くんです。\\n 弱くても、絶対に後悔したくないから」", "349000831_44": "(わたしと同じくらい小さいのに。\\n でも、この子はまっすぐに前を向いて進んでる)", "349000831_45": "(迷いなく、自分のやりたいことを……)", "349000831_46": "(今のわたしがやりたいことは……ッ!)", "349000831_47": "「……待ちなさいッ!」", "349000831_48": "「わたしも行くわ。たった1人の大切な妹を、\\n 家族に等しい隊員たちを護るためにッ!」", "349000831_49": "「はい……ッ!\\n 行きましょう、一緒にッ!」" }