{ "314000632_0": "「はあああ――ッ!!」", "314000632_1": "「マリアさん、さっきと比べて随分と勢いが違いませんか?」", "314000632_2": "「ええ……次から次へと、キリがないわね」", "314000632_3": "「開けた場所では不利ね。\\n もっと本部に近づいて防衛ラインを固めましょう」", "314000632_4": "「了解ですッ!」", "314000632_5": "「装者2名、本部入り口前に展開。\\n 掃討戦から防衛戦へと移行します」", "314000632_6": "「うむ……」", "314000632_7": "(だが、それでも手ぬるい攻め方だ)", "314000632_8": "(我々と装者の分断を企図したにしては布陣がおかしい。\\n 内に薄く、外に固めの包囲網だ)", "314000632_9": "(俺なら、装者を遠くに足止めしている内に二課を潰す)", "314000632_10": "(装者や俺たちを殺すのが目的ではない……?)", "314000632_11": "(ならば、一体?)", "314000632_12": "「まさか……二課の戦力を1箇所に集めるため?」", "314000632_13": "「敵の狙いは、装者を二課に集めること……?」", "314000632_14": "「まさか、既にッ!?」", "314000632_15": "「ここじゃ状況がわからない。\\n 了子さん、あたしは発令所へ行く。調整が終わったら――」", "314000632_16": "「駄目よッ! この研究室から出ないでッ!」", "314000632_17": "「弦十郎くんッ! アリシアは二課を――」", "314000632_18": "「それでは、リハーサルを開始しましょう」", "314000632_19": "「なに? この音楽……」", "314000632_20": "「……これは、脳に直接」", "314000632_21": "「なんだか、眠くなって……」", "314000632_22": "「ちょっとッ! どうした……の……?」", "314000632_23": "「ガングニール、アガートラーム、機能停止ッ!」", "314000632_24": "「脳波パターンは平常値――。\\n これは睡眠時の脳波に極めて酷似しています」", "314000632_25": "「弦十郎くんッ!\\n アリシアはアルモニカで二課の機能を停止させる気よッ!」", "314000632_26": "「なッ! だから二課に装者をッ!?」", "314000632_27": "「なに、この音楽は……」", "314000632_28": "「なにか、不思議な……」", "314000632_29": "「くッ……この奇襲は……。\\n 北極基地への攻勢を防ぐためだけでは、なかった、のか……」", "314000632_30": "「万が一、アルモニカの存在が、露見した場合……。\\n 対策を、講じる暇を、我々に、与えぬために……」", "314000632_31": "「すまない……了子くん、俺も……」", "314000632_32": "「…………」", "314000632_33": "「本部、応答してッ!\\n 弦十郎くん、応答して、弦十郎くんッ!」", "314000632_34": "「…………」", "314000632_35": "「……了子さん、一体何が?」", "314000632_36": "「やられたわね。まさかこんなに早く……」", "314000632_37": "「……ライフラインへの影響は特にみられない。\\n やっぱり、ピンポイントで、二課が狙われたみたいね」", "314000632_38": "「アルモニカによる永遠の子守歌。\\n それが二課に放たれた」", "314000632_39": "「それじゃ、みんなは、永遠の眠りに……?」", "314000632_40": "「ええ……今、この本部周辺で意識があるのは、\\n 私たちだけでしょうね」", "314000632_41": "「なんで、あたしらだけ眠らずにすんでるんだ?」", "314000632_42": "「先程の計画資料に書いてあった設計概論を読んで、\\n 急いで対抗策を組んでおいたの」", "314000632_43": "「アルモニカの音を相殺するための中和装置をね」", "314000632_44": "「たったあれだけの時間でかッ!?」", "314000632_45": "「本当は、二課全体をカバーできるようにしようとしたんだけど、\\n 流石に時間が無かったわ……」", "314000632_46": "「……もっとも、相殺音の特定が間に合わなかったら、\\n 私たちもバッタリ、だったけどね」", "314000632_47": "(とは言っても、あの急ごしらえで防げたのは奇跡かしら)", "314000632_48": "「なあ、みんな目覚めるんだよなッ!?」", "314000632_49": "「…………」", "314000632_50": "「まさか、こんなの……、\\n あっけなさすぎるだろッ!」", "314000632_51": "「――なんだッ!?」", "314000632_52": "「主力のお出ましね。\\n なんて抜け目のない」", "314000632_53": "「了子さん、アルモニカの音は?」", "314000632_54": "「幸い、アルモニカの音は止んでいるわ。\\n 流石に、あれだけ強力な力、連続使用は無理でしょう」", "314000632_55": "「ギアの調整は?」", "314000632_56": "「そっちも済んでるわ、だけど……」", "314000632_57": "「今、二課は壊滅的状況よ。\\n あの2人の装者も戦えない」", "314000632_58": "「わかってる。あたしがなんとかする……」", "314000632_59": "「……ごめんなさい。こんな状況なのに、\\n なにもいい案が浮かばないわ」", "314000632_60": "「まさか、こんな事態になるなんて……」", "314000632_61": "「いいえ、もっと早く気づけていれば、\\n 対策もできたはず……天才櫻井了子が聞いてあきれるわね」", "314000632_62": "「了子さんはいつだって天才だよ。\\n ――みんなのこと、頼む」", "314000632_63": "「奏ちゃん……」", "314000632_64": "「アルカ・ノイズを引き連れて、錬金術師のお出ましか」", "314000632_65": "「あの程度なら、あたしが蹴散らしてやるさ」", "314000632_66": "「それだけじゃないわ。その後ろをご覧なさい」", "314000632_67": "「……やっぱり来たか」", "314000632_68": "「――ベルゲルミルッ!」" }