{ "205020422_0": "「翼の迅速な対応により被害を未然に防ぐことができた。\\n よくやってくれたな。帰ってゆっくり休んでくれ」", "205020422_1": "「はいッ!」", "205020422_2": "「翼さん、お疲れ様でした。\\n では、次に向かいましょう」", "205020422_3": "「……次? 今日の予定は他にないはずですが?」", "205020422_4": "「さあ、こちらです」", "205020422_5": "「ちょっと、どこへ……緒川さん? 緒川さんッ!?」", "205020422_6": "「さあ、今回の女子力アップの特訓は、部屋の片づけです」", "205020422_7": "「まさか、片づけとは……ッ!?」", "205020422_8": "「そして教えるのはわたし。\\n 頼まれたから、加勢に来たわ」", "205020422_9": "「マリアッ!?」", "205020422_10": "「効率を重視した片づけなら得意分野だわ。\\n あなたを1人前にしてあげる。このわたしに任せなさいッ!」", "205020422_11": "「お、お手柔らかに頼む……」", "205020422_12": "「……ふー、洋服をたたみ終わったぞ。\\n これを洋服ダンスに――む、入らない? くっ、このッ!」", "205020422_13": "「ちょ、ちょっと待って翼ッ!\\n どうしてせっかくたたんだ洋服を無理に押し込むのッ!?」", "205020422_14": "「どうしても何も、こうしなければタンスに入らないだろう?」", "205020422_15": "「ああもう、不器用なんだからッ! こっちはわたしに任せて、\\n あなたはそっちの雑誌を束ねてなさいッ!」", "205020422_16": "「わ、わかった。雑誌を束ねる……、\\n このビニール紐を使うんだな。よし、やりとげてみせるッ!」", "205020422_17": "「まずはクロスさせ……ひっぱり……むむ、ズレる……?\\n 猪口才な、大人しく……ぬ、むぉッ!? う、ぉあ……ッ!?」", "205020422_18": "「変な声が聞こえてくるんだけど何をして――翼ッ!?\\n 本当に何をしているのッ!?」", "205020422_19": "「紐を縛ろうとしたら、こいつが言うことを聞かず――」", "205020422_20": "「雑誌も散らばってるし、\\n ……ああもう、お手本を見せてあげるからッ!」", "205020422_21": "「……本当にすまない」", "205020422_22": "「ちゃんと見ておきなさい。\\n 雑誌の縛り方は、ここをこうしたら、こうして……こう」", "205020422_23": "「や、やってみよう。ここをそうしたら、ああして……あれ?」", "205020422_24": "「どうしてそうなるのかしら……」", "205020422_25": "「わざとではないんだッ! それだけは信じてくれッ!」", "205020422_26": "「分かってるわよッ! じゃあ、洋服のしまい方だけど、\\n 一度に入れようとせず一着ずつ丁寧に……やってみて」", "205020422_27": "「一着ずつ……一着ずつ……む、崩れ……、ダメだ、\\n もう少し努力しろッ、崩れるなッ、気合で畳まれていろッ!」", "205020422_28": "「無機物に気合を望まないッ! あなたが気をつけるのッ!\\n ああ、もうッ! それはこうやって――ッ!」", "205020422_29": "「おお……ッ! さすがはマリアだ……ッ!\\n あっという間に部屋が片付いた……ッ!」", "205020422_30": "「これくらい当然よ。\\n わたしはマリア・カデンツァヴナ・イヴよ?」", "205020422_31": "「……って、わたしが片づけたらダメじゃないの」", "205020422_32": "「マリアさんでもダメでしたか」", "205020422_33": "「……ごめんなさい、安請け合いをしてしまったわ」", "205020422_34": "「実はこれまでに僕も何度か、翼さんに掃除の手ほどきを\\n してみたことがあるのですが、一度も成功したことがなくて」", "205020422_35": "「……普段の凜々しい翼さんを知っていると、\\n このギャップも可愛らしく思えるんですよね」", "205020422_36": "「分かる気がするわ。手を貸さずにはいられなくなる気持ち。\\n あんな風に無邪気に喜ばれたりすると、余計にね」", "205020422_37": "「女子力を高めてもらおうとは思いましたが、\\n まあ、僕らだけが知っている魅力があっても良いでしょう」", "205020422_38": "「全く、甘いんだから。\\n ……それにしても」", "205020422_39": "「おおッ! 布団もふかふかじゃないかッ!」", "205020422_40": "「無自覚でわたしたちを操ってしまうなんて。\\n ……この剣、恐ろしいわ」" }