{
"101000311_0": "雑音と不協和音と",
"101000311_1": "「すまないな、貴重な放課後に呼び出してしまって」",
"101000311_2": "「いえ、それよりも、今日は……」",
"101000311_3": "「はいはーいッ! まずはメディカルチェックの結果だけど、\\n 身体に異常はほぼ、見られませんでした~♪」",
"101000311_4": "「ほぼ……ですか。良かった……でも、それよりも\\n 教えてくださいッ! あの力のことをッ!」",
"101000311_5": "「うむ……あの力は、聖遺物の力だ」",
"101000311_6": "「せいいぶつ……?」",
"101000311_7": "「聖遺物とは、世界中の伝説や伝承に登場する、\\n 現代では製造不可能な異端技術の結晶の事だ」",
"101000311_8": "「多くは遺跡から発掘されるんだけど、経年劣化や損傷が\\n 激しくて、ほとんどは欠片の状態で見つかるの」",
"101000311_9": "「翼の持つ天羽々斬などもそうだな。\\n 彼女のペンダントの中には、刃の欠片が入っている」",
"101000311_10": "「聖遺物の欠片にほんの少し残った力を増幅して、\\n 解放する唯一の手段が、特定振幅の波動なの」",
"101000311_11": "「つまりは歌だ。歌の力によって聖遺物を起動させることで、\\n その力を纏う事ができるようになる」",
"101000311_12": "「その力はノイズの持つ炭素分解能力に耐え、\\n 位相差障壁を無効化する事ができる」",
"101000311_13": "「とくていしんぷくのはどう……。歌の力……」",
"101000311_14": "「……ま、簡単に言えば、聖遺物は歌によって、\\n ノイズに対抗する力になるということだ」",
"101000311_15": "「……そうだ。あの時も、胸の奥から歌が浮かんできたんです。\\n そしたら、鎧みたいな物が――」",
"101000311_16": "「それが、アンチノイズプロテクター。\\n つまりはシンフォギアなの」",
"101000311_17": "「シンフォ……ギア……」",
"101000311_18": "「だからとて、どんな歌、誰の歌にも\\n 聖遺物を起動させる力が備わっているわけではないッ!」",
"101000311_19": "「え……? あの……翼……さん?」",
"101000311_20": "(――そう、ガングニールは奏の、奏だけの力だ。\\n 奏が自らの全てを賭けて手に入れた無双の力)",
"101000311_21": "(だから――違うッ!\\n あれは、奏のガングニールではないッ!)",
"101000311_22": "「……聖遺物を起動させ、シンフォギアを纏う、歌を唄える\\n 僅かな人間を、我々は適合者と呼んでいる」",
"101000311_23": "「それが翼であり、君であるのだ」",
"101000311_24": "「はあ……全部はよくわからないんですけど、\\n その……聖遺物なんてわたし、持ってません」",
"101000311_25": "「……いや、持っている。埋まっている、といった方が正しいか。\\n これは先ほどのメディカルチェックでとったX線写真だが……」",
"101000311_26": "「心臓付近に複雑に食い込んでいる為、手術でも摘出不可能な\\n 無数の破片……」",
"101000311_27": "「調査の結果、この影はかつて奏ちゃんが身に纏っていた\\n 第3号聖遺物――」",
"101000311_28": "「ガングニールの砕けた破片であることが判明しました……。\\n ……奏ちゃんの置き土産ね」",
"101000311_29": "(―ッ!?\\n そんな……じゃあ……やはり奏の――ッ!?)",
"101000311_30": "(翼……)",
"101000311_31": "「あの、それでわたしはこれからどうすれば――?」",
"101000311_32": "「日本政府、特異災害対策機動部二課として、協力を要請したい。\\n 君のシンフォギアの力を、我々に貸してはくれないだろうか?」",
"101000311_33": "「……わたしの力が、誰かの役に立つんですよね?\\n それなら――この力で誰かを助けられるなら、やりますッ!」",
"101000311_34": "(そうと決めたら、翼さんにも……ッ!)",
"101000311_35": "「………………」",
"101000311_36": "(分かっている、あいつが悪いわけではない……。\\n だが……、……ん?)",
"101000311_37": "(こいつは……)",
"101000311_38": "「翼さんッ! わたし、戦いますッ!」",
"101000311_39": "(……何と言った? 戦う……?)",
"101000311_40": "「慣れない身ではありますが、がんばりますッ!\\n 一緒に戦えればと思いますッ! その、良かったら握手をッ!」",
"101000311_41": "(……ッ、まるで……遊び気分じゃないか。\\n 奏の、覚悟を……なのに……ッ!)",
"101000311_42": "「あ、あの……握手はさすがに、ずうずうしい……ですよね……\\n でも、一緒に……戦えれば……と……」",
"101000311_43": "「――ッ!? ノイズ警報ッ!」",
"101000311_44": "「ノイズ――ッ!!」",
"101000311_45": "「本件を我々二課で預かることを一課に通達ッ!\\n 出現座標――くッ、近い……ッ!」",
"101000311_46": "「迎え撃ちますッ!」",
"101000311_47": "「わたしも――ッ!」",
"101000311_48": "「待つんだ、君はまだ……ッ!」",
"101000311_49": "「……ッ、わたしの力が誰かの助けになるんですよねッ!\\n シンフォギアでないとノイズと戦えないんですよねッ!」",
"101000311_50": "「――だったら、行きますッ!」",
"101000311_51": "(わたしだって、翼さんや……奏さんみたいにッ!)",
"101000311_52": "「……あの子は、翼のように\\n 幼い頃から戦士として鍛錬を積んできたわけではない」",
"101000311_53": "「ついこの間まで日常の中に身を置いていた少女が、誰かの\\n 助けになるというだけで戦いに赴けるということは……」",
"101000311_54": "「――歪なことではないだろうか?」",
"101000311_55": "「つまり、あの子もまた私たちと同じ、\\n こっち側ということね……」",
"101000311_56": "「来たか……」",
"101000311_57": "(戦場に立つのは――立てるのは防人のみ。\\n あのような覚悟のない者を戦場に――)",
"101000311_58": "「Imyuteus amenohabakiri tron……」",
"101000311_59": "(――立たせるわけにはいかないッ!)",
"101000311_60": "「わたしだけで決着をつけてやるッ!」"
}