{ "329000641_0": "「向こうの世界でそんなことがあったとはな」", "329000641_1": "「まさかあの世界にキャロルまでいたなんて」", "329000641_2": "「何度か行き来してたけど、全然気づかなかったデス」", "329000641_3": "「ずっと向こうに行きっぱなしというわけではないもの。\\n わたしたちが知りうるのは、その世界のごくごく一部よ」", "329000641_4": "「それじゃ、やっぱりボクが見た夢は……」", "329000641_5": "「夢?」", "329000641_6": "「ここ数日、何度かキャロルの夢を見たんです」", "329000641_7": "「最初はボクの記憶が構築した、\\n ただの夢だと思ったんですが……」", "329000641_8": "「途中から、明らかにボクの記憶に無い情報まで\\n 混じりだしたんです」", "329000641_9": "「記憶に無い情報?」", "329000641_10": "「はい。キャロルが黒い騎士に追いやられて、\\n チフォージュ・シャトーから逃げ出すところも見ました」", "329000641_11": "「確か、その黒騎士の画像なら、\\n 持ち帰ったデータに入ってたはずだ」", "329000641_12": "「ええと……はい、ありましたッ!」", "329000641_13": "「……ボクの見た夢と瓜二つです」", "329000641_14": "「マジかよ」", "329000641_15": "「はい。でもその夢の中では、\\n オートスコアラーたちはキャロルを護って残っていました……」", "329000641_16": "「確か以前も、並行世界間の同一人物の間で、\\n 精神的な相互影響が見られた事例があったな」", "329000641_17": "「はい……もう1人の響ちゃんの件とかです」", "329000641_18": "「最近では緒川さんの件でも、影響があったみたいですね」", "329000641_19": "「はい。今回もそれらと同様に、向こうのボク……。\\n いいえ、キャロルとの意識の混線が起きているんだと思います」", "329000641_20": "「意識の混線……?」", "329000641_21": "「はい。それらの混線や相互影響は、恐らくは\\n 強烈な精神的負荷を受けた際に引き起こされるものだと思います」", "329000641_22": "「どうしてエルフナインに起きるデスか?」", "329000641_23": "「この肉体は本来キャロルのもの、\\n だからボクとの混線が起きたのでしょう」", "329000641_24": "「エルフナインとキャロルの意識が……」", "329000641_25": "「どうだ、様子は?」", "329000641_26": "「幸いバイタルは安定しつつありますが、\\n 意識の方はまだ……」", "329000641_27": "「…………」", "329000641_28": "「う……」", "329000641_29": "「パ、パ……」", "329000641_30": "「キャロルちゃんッ!?」", "329000641_31": "「意識が戻ったか?」", "329000641_32": "「いえ、意識レベルは、依然低いままです」", "329000641_33": "「怖い夢を見てるのかな……?」", "329000641_34": "(キャロルちゃん……。\\n 今度は、必ず助けるからね)", "329000641_35": "(パパが……また夜遅くまで1人で研究を続けている)", "329000641_36": "(遺跡の探索から帰ってきたパパは、\\n いつも以上に、研究に没頭するようになった)", "329000641_37": "(パパが、熱心に研究していたモノ……)", "329000641_38": "(そう、あれは……分解を目的とした解析機――\\n 今で言うアルカ・ノイズの研究だった)", "329000641_39": "(でも、その時、オレはそれを知らなくて……)", "329000641_40": "「パパ――ッ!」", "329000641_41": "「パパ、何処にいるのー?」", "329000641_42": "「キャロル、こっちだよ」", "329000641_43": "「パパ、やっと見つけた」", "329000641_44": "「どうかしたのかい?」", "329000641_45": "「食事の用意ができたから呼びに来たの」", "329000641_46": "「おっと、もうそんな時間だったのか……」", "329000641_47": "「……ねえ、パパ。\\n このヘンテコな物は何?」", "329000641_48": "「これかい? そうだな……分解解析機のプロトタイプ\\n と言ったところかな」", "329000641_49": "「分解解析機?」", "329000641_50": "「この間、遺跡を探索していて遂に見つけたんだよッ!\\n 先史文明期の遺産、これの設計図の一部を」", "329000641_51": "「……この設計図に描かれる絵……何処かで……」", "329000641_52": "「――ッ!?\\n これってもしかして、人間を炭に変えちゃうあの魔物ッ!?」", "329000641_53": "「パパッ! こんなの造っちゃダメだよッ!」", "329000641_54": "「安心して、キャロル。\\n もちろん、人間を炭にするために造るわけじゃない」", "329000641_55": "「本当に?」", "329000641_56": "「キャロルが悲しむことを、パパがするはずないだろう?」", "329000641_57": "「……うん」", "329000641_58": "「これはね。森羅万象を読み解くために、\\n 人類のために必要なものになるんだよ」" }