{ "329000211_0": "消えゆく想い出", "329000211_1": "「お呼びでしょうか、局長」", "329000211_2": "「今度はどんな問題が発生したワケダ?」", "329000211_3": "「なーんか嫌な予感がするんだけど」", "329000211_4": "「心外だね、そんなに警戒されるなんて」", "329000211_5": "「日頃の行いの帰結というワケダ」", "329000211_6": "「はは。できないね、否定は」", "329000211_7": "「ともあれ。よく来てくれた、3人とも」", "329000211_8": "「ご用件はなんでしょうか?」", "329000211_9": "「せっかちだね、君たちは」", "329000211_10": "「現れたのさ、協会が長年追い続けてきた、\\n 例のはぐれ者がね」", "329000211_11": "「長年……というと、まさかキャロルッ!?」", "329000211_12": "「いいね、察しが。その通りだよ」", "329000211_13": "「キャロル・マールス・ディーンハイムッ!\\n とうとう尻尾を掴んだというワケダッ!」", "329000211_14": "「で、どこに隠れてたのよ?」", "329000211_15": "「馴染みの地だよ、君たちにとっても」", "329000211_16": "「まさか――」", "329000211_17": "「その通り。日本さ」", "329000211_18": "「また日本……妙な因縁というワケダ」", "329000211_19": "「嫌な予感が当たりそう……」", "329000211_20": "「それで、どういった処遇を?」", "329000211_21": "「捕縛しなければね、はぐれ者は」", "329000211_22": "「理解してもらわねば、僕らの理想を。もう一度ね」", "329000211_23": "「眠たいことを言うワケダッ!」", "329000211_24": "「落ち着け、プレラーティ」", "329000211_25": "「――ッ!」", "329000211_26": "「やつが持ち出した物についての情報を引き出す必要もあるだろう」", "329000211_27": "「ひとたび捕縛すれば、生殺与奪はあーしらの手の内――」", "329000211_28": "「用済みになったら、その時考えればいいじゃない」", "329000211_29": "「そうだね。追々考えるとしよう、彼女の正式な処遇は」", "329000211_30": "「まずは捕縛を、そのためにもね」", "329000211_31": "「納得はいかないが……任務としては承知したワケダ」", "329000211_32": "「結構」", "329000211_33": "「捕まえたらボーナスたんまり出してよね?」", "329000211_34": "「検討しておこう、前向きにね」", "329000211_35": "「やった。そうと決まれば早く行きましょッ!」", "329000211_36": "「では、ただちに日本へと飛びます」", "329000211_37": "「期待しているよ、いい仕事を。いつも通りにね」", "329000211_38": "「チッ!」", "329000211_39": "「そう荒ぶらないで、プレラーティ」", "329000211_40": "「まあ気持ちはわかるけどね」", "329000211_41": "「キャロルにはチフォージュ・シャトーの借りがあるワケダ……」", "329000211_42": "「プレラーティが長年かけて設計してたのを、\\n 横から掻っ攫われちゃったんだものねえ」", "329000211_43": "「とっとと行って首根っこを押さえるワケダ」", "329000211_44": "「それじゃ、ちゃっちゃと終わりにして、\\n ボーナスでオシャンティな服でも仕入れましょうか」", "329000211_45": "「油断しないでね、2人とも」", "329000211_46": "「どうして? たかが、はぐれ1人じゃない」", "329000211_47": "「ひとたび協会を出奔した以上、\\n やつも相応の覚悟を決めているはずよ」", "329000211_48": "「チッ……」", "329000211_49": "「相当な激戦となることも想定に入れなければ……」", "329000211_50": "「もう。相変わらずサンジェルマンは心配性ね」", "329000211_51": "「もっと気楽に行きましょ?」", "329000211_52": "「あーあ。マスターに叱られちゃった」", "329000211_53": "「当然ですわね。ターゲットを取り逃がしてしまったのですから」", "329000211_54": "「雁首揃えて囲んでおきながら逃がしました、ではな。\\n 地味にも程があるというもの」", "329000211_55": "「けど、アイツ、逃げ足だけは速かったんだゾ?」", "329000211_56": "「逃がした原因はお前だろうが」", "329000211_57": "「あれれ? そうだっけ? 覚えてないゾ」", "329000211_58": "「ミカの広範囲攻撃で上がった粉塵に\\n 紛れて逃げられてしまいましたのよ」", "329000211_59": "「あれは少々派手過ぎた」", "329000211_60": "「うう……手加減は苦手だゾ……」", "329000211_61": "「それに、途中でガリィが寄り道してたのも悪いゾ?」", "329000211_62": "「はあ? あたしがあのクソ雑魚、\\n 痛ぶってたから釣れたんだろがッ!」", "329000211_63": "「まあ、そうとも言えますわね」", "329000211_64": "「でしょでしょ? もっと褒めて褒めて」", "329000211_65": "「だが、次はどうやって炙り出したものか」", "329000211_66": "「そうですわねえ……」", "329000211_67": "「それよりチューしてほしいゾッ!」", "329000211_68": "「だーめ。せっかく手に入れた想い出も、\\n マスターに没収されちゃったんだから」", "329000211_69": "「ううッ。お腹ペコペコだゾ……」", "329000211_70": "「そんな顔したって、ない袖は振れないってえの」", "329000211_71": "「そちらの方も、また集めないといけませんわね」", "329000211_72": "「賛成ー♪ そうすればコソコソ隠れてる\\n ネズミちゃんも顔を出すかもだし?」", "329000211_73": "「ならば、派手に集めるとしようか」", "329000211_74": "「たくさん集まったら、今度こそチューしてほしいんだゾッ!」", "329000211_75": "「わかった、わかった」" }