{
"328000311_0": "忍びとの戦い",
"328000311_1": "「さあ、その命ッ! 捧げてもらおうかッ!」",
"328000311_2": "「く……ッ!?」",
"328000311_3": "(多勢に無勢、1人でこれだけを相手にするのは無理ですね)",
"328000311_4": "(なんとか弟を連れて、切り抜けなければ――)",
"328000311_5": "「はッ!!」",
"328000311_6": "「む、消えただとッ!?」",
"328000311_7": "「あそこだッ!」",
"328000311_8": "「オロチ様、如何いたしましょうッ?」",
"328000311_9": "「追えッ! なんとしても彼奴を討ち取るのだッ!」",
"328000311_10": "「ははッ!!」",
"328000311_11": "「はぁ、はぁ、はぁ……」",
"328000311_12": "「大丈夫ですか、しっかりしてください」",
"328000311_13": "(意識は戻らないか)",
"328000311_14": "(発熱、発汗、呼吸――容態は悪化するばかりだ)",
"328000311_15": "(すぐに安全な場所に運んで解毒処理を施さなければ。\\n このままでは命が危うい……)",
"328000311_16": "(すてくん……、兄上……)",
"328000311_17": "「どうして……こんなことに……」",
"328000311_18": "「いたぞッ!」",
"328000311_19": "「逃がすなッ!」",
"328000311_20": "「はあ――ッ!」",
"328000311_21": "「くッ!」",
"328000311_22": "「なッ!? 手裏剣を撃ち落としたッ!?」",
"328000311_23": "「ええい、敵は手負い連れだッ! 仕留めろッ!」",
"328000311_24": "「はああ――ッ!」",
"328000311_25": "「させませんッ!」",
"328000311_26": "「ぐぎゃああッ!!」",
"328000311_27": "「おのれ、小癪な――」",
"328000311_28": "「ぐあああッ!?」",
"328000311_29": "「相手は1人だ、複数でかかれッ!」",
"328000311_30": "「応ッ!!」",
"328000311_31": "「ぐはッ!?」",
"328000311_32": "「ぎゃあああッ!!」",
"328000311_33": "「奴め、器用に手足を狙いおってッ!\\n 我らを愚弄するかッ!」",
"328000311_34": "「愚弄されても仕方あるまい。\\n どいつもこいつも使い物にならぬ奴らめ」",
"328000311_35": "「オ、オロチ様ッ!」",
"328000311_36": "「囲め。いくら無能でも、堤になることくらいはできよう」",
"328000311_37": "「ははッ!!」",
"328000311_38": "「お前たちの息の根はこの俺の手で止めてやろう。\\n 貴様らの兄、総司と同様にな」",
"328000311_39": "「オロチッ! やはりあなたがッ!」",
"328000311_40": "「兄上の無念、必ずや晴らさせてもらいますッ!」",
"328000311_41": "「袋の鼠がチューチューとよく鳴きよるわ」",
"328000311_42": "「そんなお荷物を抱えて、俺の相手ができるかな?」",
"328000311_43": "「僕の最後の家族――護ってみせますッ!」",
"328000311_44": "「笑止――ッ!」",
"328000311_45": "「闇に息づく忍びが、何を甘いことをほざくッ!」",
"328000311_46": "「あなたの言う通り、僕らは忍び。\\n 人の世を護るために、この手を敢えて汚すこともある……」",
"328000311_47": "「だけど、心を持つ刃が忍びッ!\\n 志も情も無ければ、振るう刃はなんの意味も持ちませんッ!」",
"328000311_48": "「総司の阿呆めも、死に際に似た様なことをほざいておったなあ……」",
"328000311_49": "「兄上が……?」",
"328000311_50": "「その甘さ故に、彼奴は命を落とす羽目になったのよッ!」」",
"328000311_51": "「あなたって人はぁぁぁぁッ!」",
"328000311_52": "「はあ――ッ!!」",
"328000311_53": "「影分身、だとッ!?」",
"328000311_54": "「覚悟ッ!」",
"328000311_55": "「むおッ!?」",
"328000311_56": "「荷を担いだままこの数の分身をッ!?\\n くッ、まさかここまで――ッ!?」",
"328000311_57": "(踏み込めば仕留められる。だが、それは――)",
"328000311_58": "「……力量の差がわかりましたか?」",
"328000311_59": "(忍びの技……それは殺しの技だからこそ、軽々しく命を\\n 奪うわけにはいきません。それが敵であっても――)",
"328000311_60": "「よもや、ここまでの技の冴えとは……流石は頭領の血族」",
"328000311_61": "「わかったなら退いてください。\\n でなければ、次はその命をもらいます」",
"328000311_62": "「いや……退けぬなぁぁッ!!」",
"328000311_63": "「やれッ!」",
"328000311_64": "「はッ!」",
"328000311_65": "「一体、何を――」",
"328000311_66": "「あれはまさか……先の騒乱でバルベルデに投入されたという、\\n アルカ・ノイズッ!?」",
"328000311_67": "「知っていたか、耳が早い。腐っても緒川よな」",
"328000311_68": "「だが、例え知っていたからとて、どうにもなるまいッ!」",
"328000311_69": "(確かに、アルカ・ノイズには通常兵器は\\n 効かないと聞きました……)",
"328000311_70": "(今のままでは到底、勝ち目は――)",
"328000311_71": "「さあ、アルカ・ノイズよッ! こいつらを消し去れッ!!」",
"328000311_72": "(くッ! ここは逃げの一手しかッ!)",
"328000311_73": "「今どき煙幕だとッ!? 時代錯誤にも程があるッ!」",
"328000311_74": "「オロチ様ッ、足跡も気配の残留もありませんッ!」",
"328000311_75": "「完璧な隠形だな……。\\n 奴め、昔より更に技に磨きがかかっている」",
"328000311_76": "「例え野に下ろうとも、その忍びの技に衰えはないということか。\\n ……見くびっておったわ」",
"328000311_77": "「小賢しい奴め。\\n だが……次はないと知るがいい、緒川慎次よ……」",
"328000311_78": "「ううッ……」",
"328000311_79": "「意識を強く持ってッ! しっかりしてくださいッ!」",
"328000311_80": "「はぁ……はぁ……はぁ………」",
"328000311_81": "(……峠はなんとか越えたみたいですね……)",
"328000311_82": "(ですが、適合した解毒薬ではないせいか、\\n 熱が下がりきらない……)",
"328000311_83": "(逃亡中につけられた刀創も、\\n 炎症してかなりの熱を持っている)",
"328000311_84": "(金創用の秘薬も使ったので化膿は止められると思いますが……。\\n 後は体力次第といったところですね)",
"328000311_85": "(依然、予断は許さない状況……)",
"328000311_86": "(兎に角、この容態では安易に動かすことはできません)",
"328000311_87": "(ですが、追手は草薙の者たち。\\n ここが嗅ぎつけられるのも時間の問題……)",
"328000311_88": "(こんな所で包囲されれば、今度こそお仕舞いですね。\\n こちらから決着をつけにいくしか……)",
"328000311_89": "「クッ! あの時、オロチを仕留めていれば、\\n こんなことには……」",
"328000311_90": "(もう一度あの間合いまで持ち込んで……、\\n いや、次は警戒して懐まで近付けさせはしないでしょう)",
"328000311_91": "(それに、一番の問題は、アルカ・ノイズ。\\n あれをまたけしかけられては、手の打ち様がありません)",
"328000311_92": "「何か、オロチと戦う手段を見つけなければ……」"
}