{ "321000621_0": "「これが、今の人間どもの世界か……」", "321000621_1": "「我が眠っている間に、また随分と数を増やしたものだ、\\n ゴミどもめが……」", "321000621_2": "「産めよ、増やせよ、地に満ちよ、か……。\\n あさましい教えよ」", "321000621_3": "「まあ、いい……」", "321000621_4": "「さあ、審判の時は来たッ!」", "321000621_5": "「我は劣等種に一切の権利を認めはしないッ!」", "321000621_6": "「この洗礼の雨をもって、\\n 貴様らを種としての次の階梯へと導いてやろうッ!」", "321000621_7": "「無事に階梯を昇ってくるか、さもなくば死をッ!」", "321000621_8": "「鮮血の針――カズィクル・ベイよッ!\\n 我が魔力をッ! 魂の欠片を存分に吸うが良いッ!」", "321000621_9": "「さあ――新たなる神聖な世界の始まりだッ!」", "321000621_10": "「ククク……ハハハ……ハ――ッハッハッハッ!!」", "321000621_11": "「暁。起きろ」", "321000621_12": "「どうしたんデス……」", "321000621_13": "「ま、また、敵デスかッ!?」", "321000621_14": "「落ち着け。\\n どうも、それがお前を呼んでいるようだ」", "321000621_15": "「あ、通信機……。\\n マムからの呼び出しみたいデス……」", "321000621_16": "「ごめんデス、マム……ちょっと寝てたデス」", "321000621_17": "「ああ、無事でしたか。\\n よかった……」", "321000621_18": "「なんとか無事デス……。\\n 夜中じゅう、敵に襲われて散々だったデスけど……」", "321000621_19": "「どうしたんデスか?」", "321000621_20": "「悪い知らせがあります」", "321000621_21": "「ま、まさかマリアたちが……」", "321000621_22": "「いえ、彼女たちはまだ大丈夫です」", "321000621_23": "「ですが、昨夜の深夜、\\n ロンドンでヴァンパイアらしき姿が確認されました」", "321000621_24": "「ロ、ロンドンデスかッ!? いつの間に――」", "321000621_25": "「お前が力尽きて寝ている間、確かにひととき、\\n 奴の気配が大きく動いたことがあったが……その時だろう」", "321000621_26": "「それで、アイツはロンドンで一体何をやってるんデスか?」", "321000621_27": "「空から赤い雨が降り注いだことで謎の疫病が広がり、\\n 人々が次々と倒れ、大混乱となっているという話です」", "321000621_28": "「赤い雨……それに疫病ッ!?\\n まさか――」", "321000621_29": "「ええ。届いた情報から判断するに、\\n 症状はマリアたちに極めて酷似しています」", "321000621_30": "「間違いなく、鮮血の針によるものだろうな」", "321000621_31": "「奴は過去にも同じことを行い、\\n 実際に、ある都市が滅んだ……」", "321000621_32": "「昨日話していた計画デスかッ!?」", "321000621_33": "「そうだ。放っておけば、数日で奴の仲間が誕生する。\\n そして同時に、選別に漏れた多くの者が死ぬことになる」", "321000621_34": "「しかも、被害はその都市だけで済むまい。\\n 奴は次々と、その選別と淘汰を進めていくつもりだろう」", "321000621_35": "「それまでに絶対止めるデスよッ!」", "321000621_36": "「マム……。\\n マリアたちの様子は――?」", "321000621_37": "「今はなんとか……小康状態を維持しています」", "321000621_38": "「そうデスか……よかったデス……」", "321000621_39": "(マムの声……相当悪いみたいデスね……)", "321000621_40": "「それじゃ、アタシは進むデスよ」", "321000621_41": "「ええ……無茶はしないように、と言いたいところですが、\\n 今はあなただけが頼りです」", "321000621_42": "「頼みましたよ」", "321000621_43": "「……きっと、もうマリアたちに\\n 時間はあまり残されてないデスね……」", "321000621_44": "「ああ……恐らくな。経験からして、どんなに耐性が強くとも、\\n あと一晩か二晩といったところだろう」", "321000621_45": "「そう、デスか……」", "321000621_46": "「それにマリアたちだけじゃなく、アイツにやられた他の人\\n たちも、今苦しんでいるんデスよね……なら――」", "321000621_47": "「アタシが絶対の絶対に、アイツを止めるデスよッ!」" }