{ "320000251_0": "「――という報告が入ったわ」", "320000251_1": "「そんなのってないデスよッ! ここ何日も、アタシたちは\\n この調神社を必死に守ってきたデスよッ!」", "320000251_2": "「わたしたちが戦ったことで、\\n より事態が深刻になるだなんて……」", "320000251_3": "「でも、今更守るのをやめたりしたら――」", "320000251_4": "「――周辺に大きな被害が出るでしょうね。\\n あの数の敵が街中に溢れることになるわ」", "320000251_5": "「そんなのダメデスよッ!\\n やっぱり守らないと――」", "320000251_6": "「でも、このままだと、いつかわたしたちでも\\n 抑えられなくなるかもしれない……」", "320000251_7": "「そうね。今でもかなりギリギリ……。\\n 翼たちも含めて、全員で対処したとしても、いつかは――」", "320000251_8": "「そんな……」", "320000251_9": "「それじゃどうすればいいんデスか……」", "320000251_10": "「さあ、みなさん。キッシュが焼きあがりましたぞ。\\n 今日のレシピも自信作です」", "320000251_11": "「……おや、暗い雰囲気ですが、何かありましたかな?」", "320000251_12": "「……宮司さんも当事者ですものね。\\n 今の状況についてお話します――」", "320000251_13": "「……なるほど、そういった状況でしたか」", "320000251_14": "「はい。だから、ごめんなさい……」", "320000251_15": "「……頭を上げてください。\\n あなたたちは何も悪くありません」", "320000251_16": "「みなさんが守ってくれたおかげで、私も生きておりますし、\\n こうして調神社も健在。何を謝ることがありましょうか」", "320000251_17": "「けれど、あの魔物が増えているのは、\\n わたしたちが――」", "320000251_18": "「そんなことはありません。ここまで被害が無いのは紛れもなく\\n みなさんのおかげです」", "320000251_19": "「例え早くこの異変が収まるとしても、被害が出るということは\\n 誰かが悲しむということ。それを是としてはいけません」", "320000251_20": "「今現在、あなたたちの頑張りで被害が出ていないこと。\\n これが大事なのです」", "320000251_21": "「……ありがとう」", "320000251_22": "「いいえ、私こそ本当にありがとうございます」", "320000251_23": "「でも、何か方法を見つけないと、このままだと\\n いつかあの魔物を抑えられなくなるデスよ……」", "320000251_24": "「それなんですが……。少々待っていていただけますかな?」", "320000251_25": "「なんだろう……?」", "320000251_26": "「お待たせしました。\\n これを見ていただけますかな?」", "320000251_27": "「これは……。かなり古い本ですね?」", "320000251_28": "「はい、この神社に伝わる、古文書の類ですよ」", "320000251_29": "「み、ミミズが並んでて読めないデス……」", "320000251_30": "「……なんて書いてあるんだろう?」", "320000251_31": "「……ま、マリアなら――」", "320000251_32": "「ええッ!? わ、わたしだってこんなに達筆な文字、\\n 読んだことないわよッ!?」", "320000251_33": "「おお、これは失礼いたしました。\\n では、僭越ながら内容について説明いたしましょう」", "320000251_34": "「この書は龍脈について書かれた物でしてね」", "320000251_35": "「龍脈ッ!?」", "320000251_36": "「ええ。『龍の気、乱れし刻、穢れ出現す。穢れ鎮まらざれば、\\n 大きな凶となり、災禍の魔、大地を穢す』とあります」", "320000251_37": "「そ、それって――」", "320000251_38": "「龍脈の乱れ、魔物のような敵、まさに今の事態に合致している、\\n そうは思いませんかな?」" }