{ "314000811_0": "『争い』の犠牲者たち", "314000811_1": "「北極行きの足は、なんとかなりそうかい?」", "314000811_2": "「ええ。日本をはじめ、各国政府に事情を説明して、\\n なんとか手配できたわ」", "314000811_3": "「二課が準備していた輸送機を操縦するパイロットと、\\n 北極上空までエスコートしてくれる護衛機を一個小隊」", "314000811_4": "「それから、洋上で空中給油機が一度合流する予定よ」", "314000811_5": "「そいつはありがたい」", "314000811_6": "「輸送機のパイロットは既に到着して、\\n 格納庫で準備を進めてくれてるわ」", "314000811_7": "「じゃあボチボチ、格納庫で待機しておくか」", "314000811_8": "「ええ、お願いね」", "314000811_9": "「本当なら、私もついて行きたいところだけど……」", "314000811_10": "「了子さんには、\\n あの2人と眠った二課を起こしてもらわないと」", "314000811_11": "「それができるのは了子さんだけなんだ。\\n お互い、やれることをやるしかないだろう?」", "314000811_12": "「……そうね」", "314000811_13": "「本当に、頼もしくなったわね。\\n まるで別人みたい」", "314000811_14": "「な、なんだよ、気味悪いな。\\n いつもはあまったるいしゃべりでちゃかすのにさ」", "314000811_15": "「あら。私の素直な感想よ」", "314000811_16": "「あっと。いけない、これを忘れちゃ駄目ね」", "314000811_17": "「はい、ブリーシンガメン」", "314000811_18": "「腕輪のアタッチメント側に、\\n 小型化したアルモニカの中和装置を組み込んだわ」", "314000811_19": "「前回の子守歌の出力程度なら、\\n 中和してくれるはずだわ」", "314000811_20": "「でも、もし、永久の子守歌が完成してしまったら、\\n 防ぐことはできないから注意して」", "314000811_21": "「ありがとう。助かるよ」", "314000811_22": "「それともう1つ。翼ちゃん用のものも、ね」", "314000811_23": "「ああ……必ず渡してみせる」", "314000811_24": "「あなたにしてあげられるのは、ここまでね」", "314000811_25": "「私はここでみんなの覚醒を促しながら、\\n 子守歌への対応装置の強化設計も進めるわ」", "314000811_26": "「あいつらのこと、頼む」", "314000811_27": "「ええ……」", "314000811_28": "「それに関して、少しだけ良い知らせだけど。\\n 例のEUチームで中和装置の製造を進めてくれることになったわ」", "314000811_29": "「私が設計する端から、ユニット単位で組んでくれるそうよ」", "314000811_30": "「本当か?」", "314000811_31": "「正直、子守歌の完成に間に合うかは微妙なところだけど。\\n 何もしないよりはいいでしょう?」", "314000811_32": "「あたしが失敗したら、そいつが最後の希望になるわけか……」", "314000811_33": "「縁起でもないこと言わないの。\\n 本当に、保険の保険程度の代物なんだからね?」", "314000811_34": "「あなたに……この世界の未来を託したわ」", "314000811_35": "「……ああ。必ず止めてみせるッ!」", "314000811_36": "「翼が命をかけて護ったこの世界を、\\n むざむざ終わらせるわけにいかないッ!」" }