{ "314000211_0": "引き裂かれた羽", "314000211_1": "「う……ん……」", "314000211_2": "「意識が戻ったみたいね」", "314000211_3": "「ここ、は……?」", "314000211_4": "「安心なさい。二課のメディカルルームよ」", "314000211_5": "「気分はどう? 眩暈とか、吐き気はしない?」", "314000211_6": "「ああ……大丈夫……」", "314000211_7": "「良かった。脳波やCTに異常はなかったけど、\\n 万が一ということもあるものね」", "314000211_8": "「翼……そうだ、翼は、どうなったんだッ!?」", "314000211_9": "「駄目よ、そんな急に動いちゃッ!」", "314000211_10": "「状況は俺から説明しよう」", "314000211_11": "「弦十郎のダンナ……」", "314000211_12": "「……」", "314000211_13": "「翼は、敵に連れ去られ、行方不明だ」", "314000211_14": "「やっぱり、夢なんかじゃなかったんだな……」", "314000211_15": "「残念ながら、な」", "314000211_16": "「目下総力を挙げて捜索中だが、\\n 現段階では、何も手がかりは掴めていない」", "314000211_17": "「途中で翼ちゃんの反応も途絶えちゃったしね……」", "314000211_18": "「あたしのせいで翼が……」", "314000211_19": "「奏ちゃんのせいじゃないわ。自分を責めないで」", "314000211_20": "「了子くんの言う通りだ。\\n この状況をもたらした責任は、我々全員にある」", "314000211_21": "「悔やむより、大事なのはこれからどうするかだろう」", "314000211_22": "「ダンナ……」", "314000211_23": "「怪我がまだ治りきってないところ悪いが、\\n 急ぎやってもらわないといけないことがある」", "314000211_24": "「……ああ、わかってる」", "314000211_25": "「…………」", "314000211_26": "「あ、奏さん」", "314000211_27": "「本当だわ。いらっしゃい」", "314000211_28": "「やあ、よく来たね。\\n あれ、でも翼さんがそっちに行ってなかったっけ?」", "314000211_29": "「それが……」", "314000211_30": "「……何かあったんだな」", "314000211_31": "「大事な話があるんだ。みんなを集めてくれないか」", "314000211_32": "「……わかった。\\n 装者全員に緊急招集をかけてくれ」", "314000211_33": "「りょ、了解しましたッ!」", "314000211_34": "「すみません、遅くなりましたッ!」", "314000211_35": "「ご苦労。これで全員集まったな」", "314000211_36": "「あれ、奏さん?」", "314000211_37": "「で、一体何があったんだ?」", "314000211_38": "「奏の世界に向かった翼が、何者かに攫われた」", "314000211_39": "「な……翼さんがッ!?」", "314000211_40": "「あの翼が攫われるなんて……一体誰に?」", "314000211_41": "「敵は錬金術師らしい。\\n それ以外はまだなにも……」", "314000211_42": "「安否の確認は? その後、相手からは要求や接触はあったの?」", "314000211_43": "「何もない……。あたしがこっちに来る前までは、だけど」", "314000211_44": "「それって……。\\n 無事かどうかもわからないってことデスかッ!?」", "314000211_45": "「切ちゃん、そういうこと言っちゃ駄目」", "314000211_46": "「大丈夫だよ。翼さんなら、絶対に」", "314000211_47": "「あったりまえだッ! 先輩なら大丈夫に決まってるッ!」", "314000211_48": "「わたしも無事だと思うわ」", "314000211_49": "「わざわざあの子を攫ったということは、\\n 敵には何か、目的があるってこと」", "314000211_50": "「その目的が果たされるまでは、\\n 危害を加える可能性は低いと思うわ」", "314000211_51": "「そ……そうですよね、マリアさんッ!\\n わたしもそう思いますッ!」", "314000211_52": "「奏さんッ! 翼さんはきっと無事ですよッ!」", "314000211_53": "「ああ、ありがとな……」", "314000211_54": "「危害を加える目的ならその場でするだろうしな」", "314000211_55": "「はあ……良かったデス……」", "314000211_56": "「でも、逆に言えば、目的が果たされたら……」", "314000211_57": "「ああ。今後の状況は時間との戦いになるだろう」", "314000211_58": "「早速、響くんとマリアくんは、\\n 向こうの世界に行って翼救出のサポートをしてくれ」", "314000211_59": "「はい、師匠ッ!」", "314000211_60": "「了解よ」", "314000211_61": "「先輩の危機だ、あたしも行くぞッ!」", "314000211_62": "「モチのロンデスッ! ね、調?」", "314000211_63": "「うん。黙って待ってられないもの」", "314000211_64": "「いや、それは許可できない」", "314000211_65": "「な、なんでだよッ!?\\n 今、時間との勝負って言ったばかりだろッ!?」 ", "314000211_66": "「今回の件は敵が何者でどのくらいの規模なのかも、\\n どこにいるのかも全く把握できていない異常事態だ」", "314000211_67": "「この状況下で装者全員が並行世界に渡り、なんらかの理由で\\n 戦闘不能に陥った場合、誰も支援することができなくなる」", "314000211_68": "「ある程度事態を把握するまでは、\\n 並行世界へと向かう者は絞らせてもらわざるを得ん」", "314000211_69": "「ボクも、それに賛成です」", "314000211_70": "「並行世界を行き来できるのは、装者であるみなさんだけです」", "314000211_71": "「万一、装者が全員不在となってしまった場合、ボクたちでは\\n 救助はおろか、状況の確認すらできなくなってしまいます」", "314000211_72": "「あ、そっか……そうデスよね……」", "314000211_73": "「すまない、みんな……。\\n あたしのせいで……」", "314000211_74": "「いえ、奏さんのせいではないです」", "314000211_75": "「……仕方ないか」", "314000211_76": "「わかってくれたか」", "314000211_77": "「ああ。でも、もし何かあったら、おっさんが止めたとしても\\n あたしは先輩を助けに行くからなッ!」", "314000211_78": "「……その時は、やむを得まい」", "314000211_79": "「先輩のこと、頼んだからなッ!」", "314000211_80": "「ああ、必ず助けるッ!」", "314000211_81": "「うんッ! どーんと任せてッ!」", "314000211_82": "「すぐに連れて帰ってくるわ」" }