{ "306000531_0": "「そのカルマノイズによって、\\n マリアを含め、多くの犠牲が出ました」", "306000531_1": "「マリアは最後、私に『セレナのことをお願い』と言い残し――」", "306000531_2": "「どうしてマリアが死に、私が生き残ったのか……?\\n 悔やんでも悔やみきれません」", "306000531_3": "「それから、あのカルマノイズは数回この世界に出現しています。\\n 自身が炭化せず、無尽蔵に人を殺せる恐るべき存在です」", "306000531_4": "「それが現れた地域の人は殺され、街ひとつが丸ごと\\n 滅ぼされた例もあります」", "306000531_5": "「現在、観測されている個体数は全部で4体、\\n こちらでは1体も倒せていません」", "306000531_6": "「……先日あなたたちが撃退したのが初めてです」", "306000531_7": "「じゃあ、セレナちゃんが目覚めるまでは\\n ずっと人が殺され続けて……」", "306000531_8": "「今は無き特異災害対策機動部、\\n そこに所属していた装者が対処していたと記録にありますが……」", "306000531_9": "「倒すまでには至っていません。\\n 接触回数が少ないと言うのもありますが」", "306000531_10": "「そして今、我々の世界に残っている装者は、\\n セレナ1人となってしまいました」", "306000531_11": "「対抗するための選択肢が無い状況……。\\n 兵器としてのネフィリム運用もやむなしということか」", "306000531_12": "「…………」", "306000531_13": "「マリア。違う世界とはいえ、自身の死のさまを聞いたのは、\\n 心苦しいものだったでしょう……」", "306000531_14": "「いいえ。そんな事より――、\\n わたしは……こちらのわたしはセレナを救えたのね」", "306000531_15": "「ええ、だからこそ今、あの子はああして生きているのです」", "306000531_16": "「そうね……なら、こちらの世界のわたしは本望だったと、そう思うわ」", "306000531_17": "「マリア姉さん。どうだったかな?」", "306000531_18": "「よくがんばったわね……」", "306000531_19": "「うんッ!\\n わたし、少しでもみんなの力になれるようにがんばりたい」", "306000531_20": "(……この子の本当の姉は、何よりも大切な妹を\\n 護りきることが出来た。この笑顔を護ることが出来た)", "306000531_21": "(わたしとは……違って……ッ!)", "306000531_22": "(妹を護れないどころか、さかしまに命を救われるなんて……\\n わたしは……なんて不甲斐無い……)", "306000531_23": "(わたしには、この子の信頼も、愛情も、\\n 受け取る権利などありはしない)", "306000531_24": "(セレナの笑顔を向けられるべきは、この子を命がけで\\n 護り、そして散った本当の姉……本物のマリア)", "306000531_25": "(あの子を救えなかった偽者のわたしごときが……\\n この子に慕われることなど許されるはずがない……)", "306000531_26": "「どうしたの? 大丈夫?」", "306000531_27": "「……姉さん?」", "306000531_28": "「いえ……なんでもないわ、大丈夫よ。ありがとう」", "306000531_29": "(この子の抱擁を受け入れる権利など、\\n わたしには無いはずなのに……)", "306000531_30": "「セレナ。せっかくだから、一緒に訓練をしましょうか」", "306000531_31": "「本当? 一緒に訓練ができて嬉しいッ!」", "306000531_32": "(セレナに翳りを見せてはいけない。偽者のわたしがしてあげられ\\n ることは、せめて代わりとして傍にいるくらいなんだから――)" }