{ "302000831_0": "(……懐かしい……)", "302000831_1": "(あたしは夢を見ているのか……)", "302000831_2": "(この夢は……あの時の……)", "302000831_3": "「奏ッ! 奏、大丈夫ッ!?」", "302000831_4": "「ん……ああ、翼か?」", "302000831_5": "「よかった。気が付いたッ!」", "302000831_6": "「……くッ、翼、今の状況は……?」", "302000831_7": "「……見ての通り、だよ。\\n まるで地獄絵図……あのノイズのせいで……」", "302000831_8": "「何なんだよ……あいつはッ!」", "302000831_9": "「……奏、わたしのわがままを聞いてくれる?」", "302000831_10": "「……翼? こんな時に何を……?」", "302000831_11": "「奏にはずっと唄っていて欲しい。\\n わたしが大好きな奏の歌を絶やさないで欲しい……」", "302000831_12": "「……おい、翼……?」", "302000831_13": "「……必ず、奏を護るから。\\n だから、約束」", "302000831_14": "「おい……何を言ってるんだよッ!」", "302000831_15": "「Gatrandis babel ziggurat edenal\\n Emustolronzen fine el baral zizzl――」", "302000831_16": "「やめろッ! そんなボロボロの状態で絶唱なんて唄ったら――」", "302000831_17": "「Gatrandis babel ziggurat edenal\\n Emustolronzen fine el zizzl……」", "302000831_18": "「――やめろッ! やめてくれ翼ッ!」", "302000831_19": "「……例えこの身が朽ちようとも、人の世を、無辜なる人々を、\\n そして大切な誰かを護るために――これが風鳴翼の歌だッ!」", "302000831_20": "「はあああああ――ッ!」", "302000831_21": "「翼あああああああ――ッ!」", "302000831_22": "「翼は、限界だった」", "302000831_23": "「残りの力を全て使って、あのノイズと相打ちになった」", "302000831_24": "「あたしは、何も出来なかった……」", "302000831_25": "「……本当に、辞めてしまうのですか?」", "302000831_26": "「……ああ、翼がいないのに、もう唄う意味なんて――」", "302000831_27": "「……残念です」", "302000831_28": "「あんたはどうするんだい?」", "302000831_29": "「さあ……まだ決めていません」", "302000831_30": "「ツヴァイウィングのマネージャーの仕事はなくなりますしね……。\\n 奏さんは?」", "302000831_31": "「あたしは、翼の仇を取る……」", "302000831_32": "「……そうですか。ご武運を祈っています」", "302000831_33": "(そう、あたしにもう戦い以外の歌は要らない……)", "302000831_34": "(ごめんな、翼……。でもあたしはあんたの仇を取りたい。\\n 自己満足だって分かってても、あいつらを許せない)", "302000831_35": "「……カルマノイズは、まだ残ってる。\\n 翼の仇が討てる……フ、フフ、あはははははッ!」", "302000831_36": "「…………」", "302000831_37": "「奏、聞こえるかッ! ノイズが現れたッ!\\n すぐに現場に向かってくれッ!」", "302000831_38": "「ああ、聞こえてる……」", "302000831_39": "(あたしは復讐のために歌を捨てたんだ……。\\n 翼の願いに背を向けて……)", "302000831_40": "(だから、もう翼と唄いたいなんて思っちゃいけない。\\n ……あたしには、復讐の、戦いの歌だけがあればいい)" }