{ "398001111_0": "『玲』", "398001111_1": "「2人ともご苦労だった」", "398001111_2": "「お疲れさまです。\\n 二課の方は大丈夫でしたか?」", "398001111_3": "「ああ。慌ただしかったノイズへの対応も\\n なんとか一段落がついた」", "398001111_4": "「それならよかったです」", "398001111_5": "「ところでクリスくんの姿が見当たらないが……」", "398001111_6": "「雪音はまだ館に残っています。玲と……\\n 護衛対象の少女と少し話をしたら、戻ってくると思います」", "398001111_7": "「積もる話もあるだろうし、あたしたちだけ、\\n ひと足先に報告しに戻ってきたんだ」 ", "398001111_8": "「それならいいんだ」", "398001111_9": "「今回の任務の報告がてら、いくつか聞きたいことがある」", "398001111_10": "「聞きたいこと?」", "398001111_11": "「実は、依頼を寄越した山川博士と、その後連絡がつかなくてな……\\n それに、通話記録や渡された資料などがどこにも見当たらないんだ」", "398001111_12": "「まるで、幻のようにな……」", "398001111_13": "「それに気づいてから3人に連絡を取ろうとしたが\\n 通信の類が何かに妨害されたように届かなくてな」", "398001111_14": "「現場でつかんだ情報を\\n 君たちの主観が入ってもいい……共有してもらえないか?」", "398001111_15": "「……わかった。\\n まずは、ホマレの母親……山川博士についてだけど――」", "398001111_16": "「つまり……俺たちが山川博士から連絡を受けたときには、\\n すでに博士は亡くなっていたと……?」", "398001111_17": "「はい、おそらくは」", "398001111_18": "「娘を護りたいって想いが、\\n あたしたちを呼んだんじゃないかな」", "398001111_19": "「ふむ……。\\n 君たちが無事に戻ったということは、依頼は……?」", "398001111_20": "「無論、完遂しました。\\n 彼女が踏み出した1歩を、しっかりと見届けてきましたよ」", "398001111_21": "「ああ。\\n あいつはもう独りじゃない。きっともう大丈夫だ」", "398001111_22": "「……そうか。博士の事実確認については\\n 俺たちの方でやろう。君たちは――」", "398001111_23": "「お?\\n どうしたんだよ、揃いも揃って神妙な顔しちゃってさ」", "398001111_24": "「おッ、おかえりー」", "398001111_25": "「玲とゆっくり話はできたか?」", "398001111_26": "「ああ」", "398001111_27": "「でも最後にあいつが、『おまもり』にするから写真を撮らせてって\\n 言ってきてさ。いろんなポーズで撮らされて……」", "398001111_28": "「ったく、あたしの写真なんかおまもりにされてもなぁ。\\n 見てくれよ、これ。あたしの端末でも無理やり撮るんだぞ、あいつ……」", "398001111_29": "「いいじゃないか。\\n 誰かが自分のことを想ってくれているってのは、1番のおまもりだろ?」", "398001111_30": "「……ああ。\\n 雪音も玲も、いい表情をして写っている」", "398001111_31": "「……ま、こんな写真で\\n あいつがまた目を閉じようなんて思わないようになるなら……」", "398001111_32": "「たまには、こんな残し方も悪くないかもな」" }