{ "398000611_0": "ほんとうのこと", "398000611_1": "「なんだこれ?\\n よっ……と」", "398000611_2": "「これは……アルバムか?\\n すごい分厚い――」", "398000611_3": "「つぁッ!」", "398000611_4": "「いたた……」", "398000611_5": "(なんだ、アルバムから静電気?\\n いや、紙で指を切った……?)", "398000611_6": "「あれ? 傷が無い……。\\n じゃあ、今の痛みはいったい……」", "398000611_7": "「……とりあえず、アルバムを元に戻すか」", "398000611_8": "「……あれ?", "398000611_9": " この写真、あいつじゃないか……ッ!」", "398000611_10": "(勝手に見るのは気が引けるけど……これがあいつのものなら、\\n このアルバムに何か、ヒントがあるかも……)", "398000611_11": "「……今よりもっと幼いな……でも、笑ってる。", "398000611_12": " なんだよ、こんなに可愛く笑えるんじゃないか……」", "398000611_13": "「ってことは、\\n この隣に写ってるのがあいつのママってことか」", "398000611_14": "「この写真は誕生日みたいだな……\\n ケーキの前で寄り添って、幸せそうに笑ってる」", "398000611_15": "『玲、12歳の誕生日ッ!』", "398000611_16": "「……この綺麗な文字は\\n たぶんあいつが書いたものじゃないな」", "398000611_17": "(つまり、このアルバムは\\n あいつのママが作ったものってことだ……)", "398000611_18": "『3月22日、ママとずっと一緒にいると言ってくれた。\\n 嬉しいッ! ママもずーっと一緒にいるからねッ!』", "398000611_19": "『3月31日、ママがずっと護ってあげると伝えた。\\n とても喜んでくれたッ!』", "398000611_20": "『この笑顔を護るためなら、ママはなんだってできちゃう。\\n 私が無敵のママでいられるのは、玲のおかげ』", "398000611_21": "『今扱ってる聖遺物はちょっと気難しいモノだけど、\\n ママは玲がいる限りこんなモノには負けないのだッ!』", "398000611_22": "『それに、この聖遺物の性質を応用すれば、\\n 玲の力を和らげるためのおまもりを作れるかも……』", "398000611_23": "「…………」", "398000611_24": "(どのページも、笑顔の母娘の写真が並んでる。\\n メッセージも、1枚ずつ丁寧に書かれてあるな)", "398000611_25": "『玲がママの似顔絵を描いてくれたッ!\\n たくさん褒めたら、恥ずかしいよって笑ってた』", "398000611_26": "『うーん、天使……\\n 私、こんなに幸せなママでいいのかしら』", "398000611_27": "(……そういえば本当に小さいころ、ママもあたしのアルバムを\\n こんな風に作ってくれてたっけ)", "398000611_28": "(ママの作ってくれたアルバムを、パパと一緒に\\n リビングのソファに座ってよく見たのを覚えてる)", "398000611_29": "(写真だけじゃなくて、動画もたくさん撮ってくれたな)", "398000611_30": "(パパのバイオリンに合わせて歌を唄うあたしを\\n ママがよく撮影してた)", "398000611_31": "(最後はママも一緒に唄って終わるのがお決まりだったよな)", "398000611_32": "「…………」", "398000611_33": "「……次のページから、写真の雰囲気が変わってる。この部屋……\\n まさか、病室か?」", "398000611_34": "「『事故の後遺症で入院』……そういえば、あいつのママ\\n 事故にあったって言ってたな……」", "398000611_35": "(写真に『すぐに帰るから』って走り書きがある……)", "398000611_36": "「――ッ!」", "398000611_37": "(次のページから写真が1枚も無い……。\\n あいつの言う通りなら……きっとこの辺りで亡くなったんだ)", "398000611_38": "「……いつ頃から、このアルバムを作ったのかな。\\n 最初のページは……」", "398000611_39": "「――ッ!」", "398000611_40": "「……どういうことだよ、これッ!?」", "398000611_41": "「あいつ、\\n なんで本当のこと言わないんだよ……ッ!」", "398000611_42": "「いや、言えなかったのか……」", "398000611_43": "「大好きなママが急に死んで、周りからは幽霊扱いされて、\\n ひとりぼっちになっちまったんだからな……」", "398000611_44": "「急にいなくなっちまうなんて、\\n きっと想像もしてなかったはずだ……」", "398000611_45": "「……あたしだって、\\n そんなこと考えてすらいなかった」", "398000611_46": "「あのときはパパとママを失って悲しくて……」", "398000611_47": "「たった1人で世界に放り出されたみたいで、\\n すごく、すごく怖かった……」", "398000611_48": "「周りがみんな敵に見えて、\\n 戦うしかないって思って、それで――」", "398000611_49": "「……そんな中であいつは、\\n 自分自身が訳のわからない状態になってる……」", "398000611_50": "「そんなの、ずっと不安に違いない……ッ!」", "398000611_51": "「誰にも助けてもらえない今のままじゃ、あいつはこの先、\\n 誰にも心を開けなくなって本当に独りになっちまう……ッ!」", "398000611_52": "「……今のあいつはひとりぼっちにさせちゃいけない。\\n あたしが探してやらないとッ!」" }